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非正規社員もボーナスがもらえる? 賞与と各種手当を取り戻す「正当な手順」ブラック企業から自分を守れ!(3/4 ページ)

» 2019年06月10日 05時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

続出する「支払え判決」

 実際に来年の法律の施行を控えて戦々恐々としている企業は多い。なぜなら賞与に限らず、住宅手当、扶養手当、皆勤手当などの諸手当を正社員だけに支給している企業は、なぜ非正規社員に支給しないのか、その合理的理由を説明できない企業が多く、単純に「あの人は正社員だから」という理由だけでは違法と判断されるからだ。

 実は今回の法律には「当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない」という文言が入っている。つまり、手当であれば、手当一つひとつについてその性質・目的に照らして合理的かどうかを判断することになる。

 例えば、正社員に皆勤手当が支給されているのに非正規には支給されないのはおかしいと裁判に訴えた場合、これまで裁判所は正規と非正規の賃金制度全体を比較し、正社員は将来転勤する可能性があるとか、会社の幹部候補生であるとかといった大ざっぱな理由で皆勤手当を支給しないのは不合理ではないという判断を下してきた。

 だが、これからは手当そのものについて非正規社員に支給しないことが合理的かどうかで判断される。

 実は冒頭のボーナス支給の判決と同じように、法律の施行を前に手当を支払うべきという判決が相次いでいるのだ。例えば、昨年4月24日の松山地裁の判決では同じ製造ラインで働く正社員に家族手手当を払っているのに、非正規社員に支給しないのは不合理だとして支払いを命じた。同じように住宅手当や精勤手当も支払うように命じている(井関松山製造所事件)。

 また、契約社員に扶養手当、住居手当、年末年始勤務手当を払わないのは違法と訴えた日本郵便訴訟の大阪高裁の判決(19年1月24日)は、一審に続いて手当の不支給は違法との判決を下している。

 さらに今年2月20日の東京高裁判決では、駅の売店で働く非正規社員に住宅手当だけではなく、退職金も支払うように命じている(メトロコマース事件)。

 これまでの判決では正社員と非正規社員の基本給の違いを不合理だと認めた判決はないが、賞与や諸手当を勝ち取った判決が相次いでいる。

phot メトロコマース事件では、駅の売店で働く非正規社員に対して、住宅手当だけではなく退職金も支払うように命じている(東京の地下鉄)

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