「日本的人事戦略の会社からは優秀な人が逃げる」ということをこれまで説明する際に、主に転職の話をしてきたが、実は新卒市場の方がインパクトが大きい。新卒でも特に優秀層が、日本的人事戦略の企業に行かなくなっている。
これも身近な例で恐縮なのだが、僕が学生の時に属していた団体のOB名簿を見ると、僕より年上は、ほぼ日本的人事制度の会社に就職していた。だが僕より15歳くらい下になると、能力主義の会社が5割にもなっている。どうも僕の世代あたりが分岐点のようだ。新卒で入った会社からの転職も目に見えて増えている。
※ただし、この3年間は“揺り戻し”があり、伝統的な大企業が人気の模様。原因は謎。
よく「最近の若者はイマイチだ」などとぼやくおじさんがいるが、そういうおじさんの会社には、本当に優秀な若者が行かなくなっているのではないだろうか。
ポイントをまとめてみる。
――日本ではそういうことが起きているわけだ。しかも20年、30年という単位で。
「能力主義でないことのデメリット」が、いかに大きいかが明らかになったわけだ。
唯一の救いは、外資系だけでなく、ほとんどの日本の新しい会社は、徹底した能力主義をとっていることだ。新興ITの企業のように、日本的人事政策とは無縁な会社が存在感を増している。彼らの人事政策がハイパフォーマーを雇える形態なのは、ベンチャーとしてゼロベースで設計してるからだろう。
それに加え、エンジニア中心の会社であることも大きいはずだ。上記4.で書いたように、エンジニアの世界では年功序列は全くフィットしない。20年生よりも5年生が有能、なんてどこの会社にもある。それをエンジニア出身の経営者はよく理解しているはずだ。
環境変化が起こる時、会社は変わらなければ他社に替わられてしまう。
この記事で書いた「日本的人事戦略と経営環境とのアンマッチ」は当面は広がる一方だろう。人事戦略の大胆な変更は、“中の人”にとって拒否感が大きすぎるので、ほとんどの会社ではドラスチックには変われない。
結果として、日本企業の競争力を削ぎ続け、さまざまな形で(分かりにくい形で)、能力主義の企業に取って代わられる。在来種の日本タンポポが西洋タンポポに少しずつ置き換わってしまったように。環境に適応できなければ替わられてしまうだろう。
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのコンサルタント。ファシリテーションを使ってプロジェクトを成功させるのが得意。
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