介護というと、一般的には「寝たきりになった高齢者のケア」と捉えられがちですが、実際には「プレ介護」が存在します。
プレ介護とは文字通り、介護前。自立して生活はできる。でも、それまでできていたことが突然できなくなったり、前の日までバリバリ元気だったのが、突然、病気が発覚し、1週間で10歳以上老いてしまったかのようになったり。しかも、最初の“変化”をきっかけに次々と予期せぬ変化が起こり、「もう大丈夫ね」と安堵(あんど)する日と「どうなってしまうんだろう」と不安な日が繰り返され、仕事と両立するのにかなり精神的にも肉体的にも疲弊します。
働くことは人生を豊かにするかけがえのない行為です。しかしながら、人間は仕事、家庭、健康という3つの幸せのボールを持っていて、どのボールが地面に落ちても、幸せになれません。
本来、転勤は前述した通り「社員が成長するため」の大切なリソースであり、私がインタビューした700人以上の中には「あのときのあの経験が私を成長させてくれた」と転勤先での経験を話してくれる人がたくさんいました。
つまるところ、転勤が働く人の人生を邪魔する職場は、働く人をコストとしてしか見ていないのです。悪いのは「転勤」ではない。働く人を「人」として見ない企業であり、経営者です。
企業=経営者は「お父さんは元気で留守がいい」という時代は過去のものであると認識し、「転勤の必要性」と「どういった転勤制度なら、社員を成長させるリソースになるのか?」をあらためて考える必要があるのではないか。そういう職場では、「仕事」「家庭」「健康」のボールをジャグリングのように回し続けられるため、会社の生産性も向上します。
「転勤=悪」と短絡的に考えるのではなく、転勤の良い面を生かす経営をする企業が増えることを期待したいです。
東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。
研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)
2017年発売の『他人をバカにしたがる男たち』で解説した「ジジイの壁」の背景となる「会社員という病」に迫ります。
“ジジイ”の必殺技は「足を引っぱる」こと。公の場で「彼女の発言を補足しますと……」と口を挟んでしまう“面目つぶし”、「私は指示したのですが○○が動かなくて……」と相手を悪者にする“責任逃れ落とし”、他人に関する必要のない情報を上司に伝える“アピつぶし”、そして“学歴落とし”や“悪評流し”――。
不毛な言動に精を出して「ジジイ化」してしまう人たちのジレンマと不安の正体について解説します。
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