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「無期雇用はお勧めできません」――ある派遣社員が法改正に翻弄された現実「改正派遣法」が派遣社員を守っていない(4/5 ページ)

» 2019年06月19日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

働く人のメリットを考えた「法改正」なのか

 非正規で働く人の無期雇用化を促す法律には、13年4月に施行された改正労働契約法もある。5年以上同じ職場で勤務した場合、無期雇用への転換を申し込める(関連記事)。しかし、施行から5年を迎えた18年4月の前後には、無期雇用化を阻止する目的での雇い止めが特に大学などで問題視された。

 改正労働契約法と同じく、派遣社員の無期雇用化を大きな目的とする改正派遣法は、施行から3年半が経過したが、法の趣旨通りに派遣社員の待遇改善が行われているのかどうか、現状では企業の実態はよく分かっておらず、そうした報道もあまり見かけない。

 Aさんは派遣社員として長年にわたって働いてきた。そのAさんからみても、改正派遣法が派遣で働く人のためになり、多くの人の希望をかなえる形になっているのかについては疑問を感じている。

 「派遣法の改正がなかったら、何事もなく以前のまま働いていたと思います。私が感じている派遣で働くことのメリットは、定時で帰れることと、子どもの病気や保護者会などで仕事を休むために有休が使えることです。仕事と家庭が両立できるメリットと、契約期間があるデメリットを天びんにかけた上で、派遣を選んでいるのです。

 仮に派遣先の企業に直接雇用された場合、私が働いているのは外資系の企業ですから、夜中にも海外社員とのビデオ会議があるなど、勤務時間も変わってくるかもしれません。まわりの社員がいままで通りでいいよと言ってくれても、私自身が精神的に辛くなってくることも考えられます。直接雇用は、子育てをしながらといった私のような働き方がしたい人にはとてもハードルが高いのです。

 法律を作る人たちは、みんなが正社員で、ボーナスをもらうことがハッピーになることだと考えているのかもしれません。でも実際はそうではなく、派遣で働きたい人がいることを知った上で、派遣法を働く人のための法律にしてもらいたいと思います」

photo 育児と両立するために、あえて「派遣」という働き方を選んでいる人も多く存在する

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