川尻: 「自分でつくるぞー」と思ったものの、ちょっと冷静に考えてみました。乳首のぽっこりを抑えるインナーを欲しいと思っているのは、ひょっとしたら自分だけではないかと。ほかの人はどう感じているのかと心配になったので、サラリーマンが多い新橋の駅前で、人間ウォッチングをすることに。
乳首がぽっこり出ているおじさんはいないかなあと思って観察したところ、たくさんいるんですよね。浮き出ている乳首を隠すようにして、歩いている人もいました。知人や友人に「乳首が目立たないインナーを開発しようと思っている。どうかな?」と相談したところ、「自分も気になっている。そうした商品があれば欲しい」といった声がありました。気になっている人はどんな服装をしているのかというと、白いシャツではなく黒や紺色の服を着て、見た目をごまかしていると言っていました。
じゃあ、女性たちはこの問題をどのように感じているのか。気になって調査したところ、「以前から気になっていた」「不快に感じている」といった意見がものすごく多かったんですよね。なぜそんなにネガティブな声が多いのかなあと思って分析したところ、男性と女性の身長差が影響していることが分かってきました。多くの女性は男性よりも背が低い。男性と向き合って会話をすると、女性の目の位置に、男性の乳首がある。というわけで、「気にしないで」と言っても、自然と目に入ってくるんですよね。
乳首が出ていることに悩みを抱えている男性は、多少いるのではないか。男性のぽっこり乳首に不快感を覚えている女性は、多いのではないか。ということは、この問題を解決できる商品は売れるのではないかと考えました。
土肥: ふむふむ。
川尻: 当時、私は社会人大学院に通っていまして、授業の中で事業計画を発表する機会があったんですよね。そこで、ちくぽこ問題を解決するインナーを開発して、その事業を大きくするといった話をしたところ、ものすごくウケたんですよ。たくさんの人が笑ってくれたものの、「その商品は売れるよ」という後押し派は2割、「そんなの売れるわけないよ」というやめとけ派は8割でした。
土肥: ネタとしては面白いですが、それを発売して、売れるかどうかと聞かれると、「うーん、どうかな」となる気持ちは分かります。
川尻: でも、自分は欲しいと思っている。プレゼンをして、2割の人が欲しいと思っている。じゃあ、自分がつくってみようと決意しました。
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