『AKIRA』悲願のハリウッド映画に! 日本作品の実写化が止まらない真相ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(4/6 ページ)

» 2019年07月05日 07時30分 公開
[数土直志ITmedia]

中国、日本コンテンツの「最大市場」に

 実は日本コンテンツの実写化で、中国はいま巨額の収入を見込める最大の市場なのである。19年公開の『アリータ: バトル・エンジェル』を見てみよう。製作費1億7000万ドルとされる中で、北米興収は8500万ドル。製作費が巨額だけにこれも期待外れと思いきや、世界興収では4億ドルを超えた。大ヒットである。その秘密は中国にある。中国興収は北米をはるかに上回る1億3000万ドルなのだ。

 5月に公開されたばかりの『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』も同様だ。こちらも北米興行は1億ドルで物足らないとされたが、中国興行は1億3000万ドルを越える。

 長年、日本のアニメ・マンガやそのキャラクターに馴染んできた中国は、米国以上に日本コンテンツに親近感がある。日本コンテンツを原作にした作品は大ヒットにつながりやすい。もちろん日本こそが日本産コンテンツにとって一番なじみの市場だが、その映画マーケットは世界の5%にも達しない。

 中国の映画市場は18年には北米の113億ドルに迫る約89億ドルと、かなり大きい。ハリウッド映画はこれまで欧米を中心にマーケットを考えてきたが、いまは中国を中心としたアジア市場も計算に入れる必要がある。その時、日本産の原作は「勝てる」作品になるというわけだ。中国で大ヒットした『君の名は。』の実写映画化がいち早く決まったのも記憶に新しいところだ。

新たなハリウッド実写化の形、「ドラマ」

 ハリウッド実写化では別の新しい動きも起きている。それはドラマシリーズである。これまでは実写化と言えば映画だったが、近年はドラマシリーズでの企画も増えている。

 大きな話題を呼んだのは1997年に発表されたテレビアニメシリーズ『カウボーイビバップ』の実写ドラマ化だ。2019年にNetflixオリジナルドラマとして正式発表され、同社の主力作品にラインアップされている。製作スタッフ、出演も決定しており、遠くない時期に配信が始まりそうだ。

 このほか『ワンピース』や『ソードアート・オンライン』といった人気作品の実写ドラマ化が正式に発表されている。ただし両作品は製作の進捗が明らかにされておらず、企画の初期段階とみられる。 

 ドラマシリーズの利点は、映画に比べれば予算が少なくて済むことだ。もちろんドラマでも日本とは桁違いな予算をかけるのが米国流だが、それでも100億円といった金額にはならない。さらにまずは10話とか4話の短いシーズンからスタートし、ヒットすればシーズンを重ねればいい。リスクは限定される。

 極端な大衆受けを狙うこともなく、ある程度コアに向けたジャンルの作品としても成り立つ。Netflixのような配信プラットフォームであれば、視聴者数に合わせて予算もコントロールできる。Netflixではすでにかなりの数の日本製のオリジナルアニメが制作されているが、今後はこれが日本アニメ・マンガ原作の実写ドラマに広がっても不思議はない。

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