このように、Libraには、Facebookが関わることによるプライバシーへの懸念、どうやってAML対策を行うかという課題がある。しかし、金融当局が最も気にするのは、黒田総裁の発言にもあったように、金融政策への影響だ。
「国が経済政策をできなくなる不安がある国は、Libraを禁止するかもしれない。国民のほとんどがLibraを使うようになってしまうと、国としてはちょっと考えるだろう」(志茂氏)
例えば、国民の多くがLibraで給与や売り上げを得て、Libraで支払いをするようになってしまった国を考えてみよう。経済緩和や引き締めを行おうとしても、金融当局が対応できるのは自国通貨に関してだけだ。場合によっては、国民が自国通貨よりもLibraのほうを信用し、通貨の信任が失われてしまう可能性もある。
そういった背景から、あくまで想像だがと断った上で、志茂氏は「使われないであろう国は、中国、北朝鮮、インド、ロシアなど」だと話す。一方で、利用可能になる国としては、「スイス、米国、シンガポールなどは早いのではないか。日本も暗号資産についての規制は世界のトップを走っているので、早いと思う」とした。
強力な自国通貨を持っている国は、プライバシー問題やAML問題が解決すればLibraが使えるようになる可能性がある。一方で、経済政策自体に影響を与える可能性がある国では、Libraの解禁には慎重だろう。これは根源的な問題であり、法定通貨圏と企業集団通貨圏が正面から対立する部分だからだ。
このように、Libraの登場は、各国の経済に根本的な影響を与える可能性を持っている。Libraはビットコインに続く、根本的な通貨革命となる可能性がある。
「Libraには面白いところがいろいろある。大規模な通貨バスケット型ブロックチェーンは世界初。急に億単位のユーザーが使い出す可能性もある。Libraへの対応によって、これまで誰もトライしなかった、国際金融と規制の例が出ることになる。国家の通貨と企業の通貨、暗号通貨。これらがどうなっていくのか、インターネットマネーがどうなるのかということだ」(志茂氏)
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