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優秀な人が大量に辞めていく企業の共通点は? 「人材流出企業の覆面座談会」で明らかに「滅びゆく会社」の特徴とは(4/6 ページ)

» 2019年07月31日 08時00分 公開
[酒井真弓ITmedia]

経営にとって都合の良い数字のみを共有

営業 毎年の業績発表での光景なのですが、「対前年比」でしか業績を語らないのはどうかと思うんですよ。この文脈だと、そもそも前年の売り上げがたいしたことない新規事業が、さも実績を上げているかのように見えてしまうし、既存事業が多額の売上を上げていても「当たり前」みたいに見えてしまう。

 対前年の伸びを大げさに取り上げ、イノベーティブだと皆の前で表彰し、首をかしげる社員がいれば、「投資フェーズ」という玉虫色のフレーズでごまかそうとする。

一同 投資フェーズ……(察し)

営業 必死で稼いで多額の利益を出している部門へのリスペクトも感じられない。一生懸命やっている人たちはしらけますよね。そもそも、正確な情報を知らなければ危機感を持てないですよ。

技術 当社の社長は、「われわれは富士山ではなくチョモランマに登っているんだ」と壮大なビジョンを掲げて、現実から目をそらそうとする。現実では「地下にいる」わけで、それを自覚すべきなのに……。

サポート 当社は、朝礼で売上などの情報をオープンにしているのですが、私も含め、みんな聞いていないですね。もはや当事者意識が薄れている自分に今、はっとしました。

人事 実際に伝わっているかどうかはさておき、形だけ「オープンにしています」という。それも、人材流出企業あるあるですね。

技術 役員会の議事録が公開されたとしても、実際のところ現場は見やしないですよ。ラインのマネジャーが語り部となって経営の考えを部下に伝える必要がある。そのコミュニケーションがしっかりできているかどうかのほうが重要な気がします。

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人事 ここまでの話で分かるのは、「仕事」や「仲間」が原因で、大量の人材流出が起こるとは考えにくいということですね。「経営・マネジメント」とのエンゲージメントに問題があると、人材流出企業になりやすいということでしょうか。

「人材流出企業」の課題を炙り出すフレームワーク

覆面座談会で使用したのが、「人材流企業の問題を可視化し、整理するために適したフレームワーク」だ。社員が抱えている問題をブレークダウンすると「経営・マネジメント」「仲間」「仕事」という3つの観点で整理できる。中心にいる「個人(あなた)」と、この3つのうち2つのエンゲージメントが破綻すると、退職を考えるケースが多いようだ。例えば、「仕事」が面白くないだけだと辞めようとまでは思わないが、「仲間」ともうまくいかなくなると辞める――といった具合だ。今回の座談会でも、ホワイトボードにこのフレームワークを描き、人材流出企業で働く5人のエピソードを3つの要素にプロットしていった。

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