こうした状況を総合的に考えると、若いビジネスパーソンを中心に強制的な転勤を望まない人が増えてきたことや、転勤を抑制する企業が出てきたということは、名実ともに終身雇用制度が消滅に向けて動き出したことを示唆しているといってよいだろう。
逆に言うと、一生のうちに何度かは転職してもよいと考えているのであれば、積極的に転勤のない会社に就職するのはアリだと筆者は考える。転勤をなくしてしまうと、転勤のある企業と比較した場合、柔軟に社員を配置できない分、経営環境が悪化した時にはリストラが行われる可能性が高くなる。だが転勤をなくせる会社は、その時点での生産性は高いので、賃金も高く、充実した私生活を送れるはずだ。
一方、何としても同じ会社で勤務したいと考えるのであれば、転勤のある企業の方が長期にわたって存続できる可能性が高い。だが、長期間、組織が変化しないと確実に生産性は低下するので、賃金はあまり上昇しないと思った方がよい。
リストラに遭う可能性は高いものの、転勤がなく給料も高い会社がよいのか、存続性は高いが、転勤があり、給料が安い会社のどちらがよいのかという選択肢と考えればよいだろう。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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