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大前研一が息子たちに施した「21世紀型教育」とは?――「先生の言うことを聞くのよ」と言ってはいけない大前研一大いに吠える!【後編】(1/6 ページ)

» 2019年08月09日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]
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 大前研一氏が代表を務める株式会社ビジネス・ブレークスルー(BBT)が、今年7月から『リカレントスタートプログラム』を新設した。リカレント教育は「学び直し」のこと。BBTでは3カ月間の短期集中型で、経営者の話を聞き、オンラインディスカッションで実践的な学びができるリカレント教育を提供している。

 本稿では、7月6日に行われたプログラム開講記念の大前氏の講演を、2回にわたってお伝えしている。前編では日本人にリカレント教育が必要な理由などについて触れた。後編では、ヨーロッパの国々がどのようにリカレント教育を進めているのかなどについて大前氏が解説。参加者の質問にも答える。

photo 大前研一(おおまえ けんいち) (株)ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長。早稲田大学卒業後、東京工業大学で修士号を、マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号を取得。日立製作所、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て現職。英国エコノミスト誌は、現代世界の思想的リーダーとしてアメリカにはピーター・ドラッカー(故人)やトム・ピーターズが、アジアには大前研一がいるが、ヨーロッパ大陸にはそれに匹敵するグールー(思想的指導者)がいない、と書いた。経営コンサルタントとしても各国で活躍しながら、日本の疲弊した政治システムの改革と真の生活者主権国家実現のために、新しい提案・コンセプトを提供し続けている。新著に『稼ぐ力をつける「リカレント教育」』(プレジデント社)

危機にひんしている日本

 いまの日本は、危機にひんしているといっていいと思います。最もだめになっているのは、役人の世界ですね。人間はうそをつきます。うそをつくことが平気になると、とんでもないことをやりはじめます。それが一連の統計偽装です。

 日本で一番成績が優秀だったはずの役人が、うそをつくようになってだめになっているのは、今までの世界で優秀だっただけで、新しい世界にはまったく対応できないことを示しています。

 企業もそうです。入社してから65歳まで頑張ってこの会社にいてください、という終身雇用の会社はさすがに少なくなりましたけれども、終身雇用ではやはりいろいろな弊害が出てきます。これまでと同じように、先輩から仕事を学ぶだけだと通用しないでしょうね。

 若い人には、会社をいまより5倍くらいよくする案を出してみろ、といったチャンスを与えることも必要です。例えば、サイバーエージェントは希望した新入社員に関連会社の社長を任せています。

 リクルートは38歳定年制という人事制度を作っています。強制的に退職とはなりませんが、入社後早々に退職金を設定する「ステップアップ支援金」と、35歳以降3年ごとに一定金額の退職金を加算する「ニューフロンティア制度」があります。基本的には15年で独立できる力をつけます。こういう会社からは新しいアイデアが出てくると思います。

 ただ、若い頃はハードスキルを勉強するやり方でもいいですが、年をとってくると構想力とか、0から1を発想する力が重要になってきます。日本ではこうした力をつけるための学び直しがうまくいっていないのです。

photo 日本企業はビジネスマンが自分のスキルをアップデートする仕組みを整備する必要がある(以下、資料の出典はBBT大学総合研究所)
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