この話は、一部のフランチャイズ加盟店の経営者が過酷な労働を強いられているコンビニ業界を見れば容易に想像できるだろう。
コンビニのフランチャイズ加盟店は、あくまで独立した経営者であり、法律上は対等な立場で本部と交渉することが前提だが、本部との力の差は明白であり、交渉の余地はそれほど多くない。一部では、労働法制が適用されないことを逆手に取り、本部が気の弱いフランチャイズ・オーナーに対して、奴隷労働に近い契約を強要するケースもあったとされている。
米国においてフランチャイズのオーナーは実業家と見なされており、それなりの覚悟と能力を持った人が従事するのが一般的である。従って、本部の言いなりで奴隷契約を結ぶというケースはあまり見られない。会社員として仕事をしているものの、契約上は個人事業主という人も珍しくないが、やはり彼等はタフに会社と条件交渉している。
実際、筆者が知るある米国人は、企業のマーケティング担当者だったが、個人事業主としての契約に移行した。その部門の業務が大きく拡大したことから、彼は次々と追加の業務を受注し、労働時間に縛られないという個人事業主の立場をうまく利用してハードワークに邁進(まいしん)。あっという間に2000万円の貯金を作り、仕事を辞めて経営大学院に進んだ。
結局のところ、こうした制度は、働く側の人間が高い意識と自主性を持っていないと機能しない。個人的には日本でも、こうした制度が広く普及して欲しいと願っているが、プロ意識に欠け、会社をムラ社会的な共同体として捉える人が多い現状では、制度の拡大は弊害が大きいだろう。
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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