社員が個人事業主として独立し、会社から仕事を受注する「タニタ」の働き方改革がちょっとした議論の的となっている。個人事業主となれば、規模は小さくてもれっきとした経営者であり、仕事に対する意識が一気に高まるのは間違いない。一方で、こうした契約が広範囲に普及した場合、不当な労働条件の温床になると批判する声もある。
健康機器メーカーのタニタでは、希望した社員に対して、個人事業主として会社と業務委託契約を結ぶ制度を2017年から導入している。この制度を利用する社員は、会社をいったん退職し、あらたに会社と契約を結ぶことになるが、基本報酬は社員時代の年収をベースに決定され、社員時代に行っていた業務が継続されるので、見かけ上、大きな違いは生じない。
ただ、基本業務に収まらない業務が発生した場合には、追加業務という位置付けになり、成果に応じて追加報酬を受けることができるほか、基本報酬には、社員時代に会社が負担していた社会保険料や交通費などが含まれるので、名目上の収入は増えることになる。就業時間にも縛られる必要はなく、出社や退社の時間も自由に決めることが可能だ。
自分が勤務していた会社と契約し、同じ仕事を続ける形なので、従業員の延長線上ではあるが、法律上はあくまで独立した事業主であり、この制度を選択した社員はその日から経営者ということになる。タニタの場合、同社以外からも仕事を受けられる契約内容なので、余力があれば、別の仕事をこなすことで、収入アップやスキル向上を図ることもできる。
新聞報道などによると現在、タニタでは少なくとも26人の社員がこの制度を利用しており、発案者である同社の谷田千里社長も大きな手応えを感じているという。
起業したり、フリーランスになったりした経験のある人なら実感としてよく分かると思うが、サラリーマンから経営者(あるいは自営業者)への転身がもたらす意識面での効果は絶大である。サラリーマンの読者の中には気を悪くする人もいるかもしれないが、親に保護されている子どもから、いきなり子どもを育てる親になったくらいの違いがある。
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