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「ホウレンソウ」は、もう古い? 結果を出すチームの習慣「ザッソウ」とは(2/4 ページ)

» 2019年10月03日 08時00分 公開
[倉貫義人ITmedia]

効率化によって崩壊しかけたチームを救った雑談と相談

 私は、効率化だけを求めてチームを崩壊させかけた経験があります。

 これまで多くの現場にマネジャーやコンサルタントとして参加してきましたが、もともとプログラマー出身の私は、とにかく無駄なことが嫌いで効率ばかりを追求しがちでした。そのために、自分がチームを率いてマネジメントする場面でも、つい効率だけを追い求め、失敗することがあったのです。


 かつて大手システム会社の社員だった私は、なんとか自分で事業を立ち上げたいと考えていました。その念願が叶って、社内ベンチャーですが起業するチャンスを会社から与えられたことがあります。

 新規事業を立ち上げるミッションを掲げてチームを運営し始めた当時の私は、いかに効率的に成果を出すかを追求し、一切の無駄を許さないマイクロマネジメントをしていました。仕事中に雑談をするなんてもってのほかです。

 それで成功すれば良かったのですが、新規事業を生み出すことは簡単でなく、効率化を求めるだけではうまくいきませんでした

 少しずつ仕事中の雑談が減り、職場の雰囲気も悪くなっていきました。メンバーからの相談もなくなり、悪い報告を致命的な状態になってから知るようになってしまいました。社内ベンチャー存続の危機です。

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 そんな悪循環から抜け出すきっかけになったのは、「何をしてもうまくいかないなら」と独りよがりで考えるのをやめて、思い切ってメンバーに相談してみたことでした。

 「お客さんが求めてるのって、この製品そのものじゃないんですよね」

 「担当の方が、導入後に社内に広めていくのが大変だって言っていました」

 「製品を売り込むんじゃなくて、社内展開をサポートすればいいかも」

 思いもよらなかったアイデアの数々が、現場で働くメンバーから出てきたのです。そのアイデアをもとに始めた導入サポートがうまくいったおかげで、大口顧客を獲得することができ、なんと新規事業の立ち上げに成功することができました。

 そこで気づいたのが、雑談と相談の大事さです。もっと早くメンバーに相談していれば、みんなに苦労をかけることもなく、数字の損失も浅くて済んだはずでした。雑談どころか相談さえできなくしていたのは、他ならぬマネジャーの私だったのです。これには大いに反省しました。

 それ以来、作業の効率化だけを求めることをやめ、雑談を含めたメンバー同士の会話や相談を推奨するようになりました。そうするとチームに活気が戻り、さらに新しいことにも挑戦する空気が生まれてきたのです。その結果、私たちのチームに何が起きたと思いますか?


 当初の事業計画よりも大幅に早く新規事業を軌道に乗せることができただけでなく、社内ベンチャーをマネジメントバイアウト(経営者による買収)という形で、自分たちの会社として独立を果たすまでに至りました。そうして創業したのが株式会社ソニックガーデンです。

 このときの経験から、アイデアを生み出し、成果を上げて結果を出すために必要なのは、効率化だけを追求するのではなく、気軽に雑談と相談ができるチームでいることこそが重要なのだと考えるようになりました。

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