ホリエモンが「ピロリ菌検査」と「HPVワクチン」を推進し続ける真意堀江貴文が語る「予防医療」(4/8 ページ)

» 2019年09月20日 07時45分 公開
[今野大一ITmedia]
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がんで祖父を亡くした

堀江: 確かに「胃がんのリスクはゼロにはなりません」というのは、実際にあること。

鈴木: はい。「除菌後胃がん」ということが実際にあるのです。だから除菌をしたからといって油断はできない。ここが一番強調しなければいけなくて、除菌すればそれで全て終わりかというと、決してそんなことはなくて、あくまで「検診とセット」です。これは子宮頸がんのHPVにもいえるのですが、必ず検診とセットです。

 保険適用になったこともあり、除菌をした人の数は今、非常に増えています。「1億総除菌時代」に入ったといってもいいかもしれないですね。毎年100万人ぐらいの人が除菌を受けています。実際、除菌が保険適用になって胃がんの死亡者数が減っているのです。これは本当にすごいことだと思います。国の予想をはるかに上回るスピードで、胃がんの死亡者数が減っているのですから、まさに「除菌のたまもの」だと思います。以前は毎年5万人ほどが亡くなっていましたが、今は4万5000人くらいです。

 ただ、40歳以下の胃がんの死亡者数はあまり減っていません。先日も山本“KID”徳郁さんが41歳で、フリーアナウンサーの黒木奈々さんが32歳という若さで亡くなりましたが、毎年1000人ぐらいの若い人が亡くなっています。

堀江: 昔は7000人も亡くなっていたんだ。

鈴木: 40年前は、40歳以下でもそれだけ亡くなっていました。これはやはりピロリ菌が原因だといわれています。現在でも私の大学の医学生の1割ぐらいはピロリ菌陽性の人がいるので、そういった人が胃がんになった場合の救命ができていないということですね。

 それで、中学生のときに除菌したほうがいいのではないかという話もあって、佐賀県や鹿児島県では、県を挙げて中学校でピロリ菌の検査をしています。それで陽性の方は除菌をすると。

堀江: これから話すHPVワクチンの話もそうだけど、これはクレーマーがすごい。こういうのをやると、すぐ文句を言う人がいるじゃないですか。

鈴木: エビデンス至上主義の方ですね。

堀江: そう。そんなことを言っていたら20年後とかになってしまう。だからこそ「政治的決断」がとても大事だと思っている。やはり病院に行かない人というのは本当に行かないですから。

 かく言う僕も身内をがんで亡くしています。僕の祖父が数年前、大腸がんで亡くなりました。祖父と頻繁に連絡を取っているわけではなかったので、僕が一緒に住んでいたら、アドバイスもできたでしょう。祖父は大正生まれで、頑固な人だった。しかも15年前に膀胱がんに罹患していて、その時も膀胱がんのせいで最初に血尿みたいなものが出ているわけ。最終的には我慢できなくなって病院に行ったらもう手遅れで、膀胱を全摘出することになり、「人工膀胱」をつけました。

 それでも完治はしたわけです。だけど、がん検診で便潜血検査で陽性が出ていたにもかかわらず、病院には行かない。精密検査の内視鏡検査をやらない。そうしたら「腰の辺りが痛い」と言い始めて、我慢できない状態になってはじめて病院に行ったらもうステージIVで、肺に転移していた。大腸がんは何とか手術で切除したけれど、3年後に亡くなりました。 それが現実。

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