すごいリーダーやできるマネジャーに共通して見られる特徴の1つとして、共感能力を上手にマネージできることが挙げられます。
部下の指導・育成に当たっては、その前提としてあなたと部下との間に信頼関係が築かれている必要があります。そのためには、相手の立場に立って物事を考えたり、話し合いをしたりすることが大切であり、相手の心の動きに敏感でなくてはいけません。そういう意味で、「相手の心の動きをつかみ取る(共感する)」能力は必須です。
しかし、それだけでは不十分です。
部下を持つあなたの「共感能力」について考えるときに、もう1つ大事なことがあります。それは、「相手にあなたの心の動きをつかみ取ってもらう(共感してもらう)」能力です。
信頼関係を築くためは、一方通行の共感ではなく双方向の共感が必要だからです。つまり、ここでいう共感能力は、心の動きを「つかみ取る」「つかみ取ってもらう」という2つの方向の能力を意味します。
では、「相手に自分の心をつかみ取ってもらう」ためにはどうすればいいでしょうか。
部下に共感してもらうには、「感情の伝播(でんぱ) 」という特性を活用します。周囲からポジティブ(ネガティブ)な感情表現を刺激として受けた人は、ポジティブ(ネガティブ)な感情を抱きがちになる│というのが、感情の伝播です。
また、感情は言語表現よりも、「表情」「声のトーン」「身ぶり手ぶり」「体の接触」「対話者との物理的距離」など、非言語的表現を通じて伝播する側面が強いことが分かっています。部下と接するときには、これらの非言語的表現に注意してください。
日本企業の管理職、特に上級管理職の人たちに研修をしていて痛感することは、この非言語的表現が海外の人たちに比べてとても下手であるということです。
GEでEQ(心の知能指数)について教えていたとき、顔の表情だけで七つの情動「幸せ」「驚き」「軽蔑」「寂しさ」「恐れ」「嫌気」「怒り」を表現するという演習を行っていました。
独立してからも、日本企業の管理職研修などで同様の演習を実施しているのですが、驚くことに、どの感情表現をしても顔の表情がほぼ同じという人が、平均して20%くらいいるのです。逆に全ての表情をうまく使いこなせる人たちに共通している経歴は、欧米諸国での駐在経験がある人たちです。
こうした状況を目の当たりにして、表情筋についていろいろと調べてみたことがあります。そうしてわかったのは、表情筋には「使わないと固まる」という特徴があるということです。
あなたの表情筋は柔らかく保てているでしょうか。心の中では十分部下に共感し、言葉遣いにおいても相手を思いやっているとしても、表情が般はん若にゃの面のようでは、部下からの共感は得られません。かえって言葉遣いと表情のギャップに恐れおののいてしまうかもしれません。
部下と相対するときに限らず、日頃から表情には留意してください。特に一対一で話をするときなどは、事前に顔をマッサージして筋肉をほぐし、鏡に向かって、先ほど説明した七つの情動に合わせて表情をつくる練習をしてください。
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