Bassetは、老舗の仮想通貨取引所bitFlyerの出身者が7月に立ち上げた。CEOの竹井氏は元ブロックチェーン開発部長だ。
「新しいものを作るのが好き。bitFlyerは取引所としては成熟して、金融庁から安定走行せよといわれるフェーズに入ってきた。ならば飛び出して、bitFlyerの中で感じていたニーズを形にしたい」と、竹井氏は起業の意図を話す。
Bassetが目指しているのは、犯罪者が関係している疑わしい送金のチェックだ。犯罪者のアドレスとの入出金を行わないよう、仮想通貨取引所へアドレスのデータやツールを提供する。
図は、7月に起こったビットポイントの流出事件で、盗まれたビットコインがどこにどう送金されたかを、Bassetが可視化したものだ。
「流出元である、最初のビットポイントのアドレスから1200コインほど移った。そのあと、0.1コインをまず送っている。これはおそらくトライアル。送金がうまくできるかテストしている。うまくいくと分かったら、残りのコインを2回に分けて、別のアドレスを経由して送金している。さらに、どんどんほかのたくさんのアドレスに広げて送ることを繰り返している。小口に分けて追うのを難しくするのが狙いだ。最終的にいくつかのアドレスに集約している。我々は、100%ではないにしても、だいたいどこに集約されたかを推測できている」
実は、どのアドレスからどのアドレスへ、いつ、いくら送られたかという情報は、過去のすべての取引について公開されている。仮想通貨の特徴であるブロックチェーンとは、こうした取引データの集合体だからだ。これを見れば、送金の流れは誰でも調べることができる。そのためのツールも以前から多数提供されてきた。
しかし、そのアドレスが誰のものなのかは不明だった。これをアルゴリズムを使って推論し、犯罪者が使う「黒いアドレス」を導き出すのがBassetのツールの特徴だ。
図でも、Bassetが犯罪者のアドレスだと推定したものは黒く、疑惑の度合いに応じて色分けされている。この黒いアドレスを取引所に提供することで、取引所はそのアドレスからの入金や、そこへの出金を止めることができるようになる。
「犯罪者は、複数のアドレスを使い分けているが、もしかしたら同じユーザーのアドレスかもしれませんよ、と推測していく。将来は、このアドレスの持ち主は誰です、ということまで分かるようにしていきたい」(竹井氏)
すでに、各取引所が管理するアドレスの一覧は出せるようになっており、例えば流出した仮想通貨がどういう送金経路をたどって、最終的にどの取引所に入金されたかも突き止められる。おそらく、最終地点の取引所に入金されたあと、ドルなどの通貨に変えられて出金されたのではないかということまで分かる。
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