「自然災害→経済破綻」その後どうなるのか 最悪のシナリオスピン経済の歩き方(6/6 ページ)

» 2019年09月24日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]
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日本の明暗を分けた「国運の分岐点」

 では、首都直下型地震と南海トラフ地震が起きた時、我々の目の前には、一体どんな社会的課題が最悪の形で浮かび上がるのだろうか。今の日本はさまざまな問題が山積だが、その中でもやはり深刻なのが「経済」であることに異論はないだろう。

 先進国の中でも際立って低い生産性、そして憲法で保障されている「健康で文化的な生活」を送れないほどの低賃金、そして、いつまでたっても脱却の兆しすらないデフレ、などこれらの問題が、巨大地震によって、さらに悪化したら――。

 アトキンソン氏の言うように、日本は中国の手助けなしに立ち上がることができない「途上国」に逆戻りしてしまうかもしれない。

 この最悪のシナリオを避けるには、経済を強くするしかないのは自明の理だ。「時給1000円なんて払ったら会社が潰れてしまう」という経営者を優遇して弱い企業を増やすのではなく、経済の原動力である労働者の賃金をしっかりと高い水準まで引き上げておく。そういう意味では、今が巨大地震を乗り越える体制づくりをする最後のチャンスかもしれないのだ。

 というような話を、笑い飛ばして165年前の幕府と同じ轍(てつ)を踏むのか、それとも現状維持を望む人たちを説き伏せて、多くの人が嫌がるところに手を突っ込む「改革」をするのか。

 後に歴史を振り返った時、2019年は日本の明暗を分けた「国運の分岐点」になっているかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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