「自然災害→経済破綻」その後どうなるのか 最悪のシナリオスピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2019年09月24日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

首都直下型地震と南海トラフの危険性

新・観光立国論』(デービッド・アトキンソン/東洋経済新報社)

 ゴールドマン・サックスの伝説アナリストとして名を馳せたアトキンソン氏は、山本七平賞を受賞した『新・観光立国論』(東洋経済新報社)で、政府の「観光推進政策」に大きな影響を与えた一方で現在は、人口減少で低迷する日本経済の復活のカギは、実効性のある生産性向上策しかないとして、毎年5%程度の「賃上げ」をすべきと強く訴えている。

 もちろん、中小企業三団体や賃上げ慎重派の経済評論家からすれば、「看過しがたい暴論」ということで、一部からは露骨なアトキンソン叩きも始まっている。そのあたりのバトルの構図は先日、『賃金上げたら日本は滅びるおじさん」の言っていることは、本当か』に詳しく紹介しているので、興味のある方はぜひお読みいただきたい。

 さて、そんなゴリゴリの経済分析をするアトキンソン氏がなぜ首都直下型地震と南海トラフの危険性を訴えているのかというと、今のまま生産性が低いことを放置しているとどんな最悪のシナリオが待っているかを分析したからだ。

 この分析で、アトキンソン氏は、東京大学生産技術研究所教授で、都市震災軽減工学の専門家である目黒公郎氏に協力を仰ぎ、世界でも例を見ないほど都市機能や人口を集中させた東京が、巨大地震に見舞われた場合、そしてそこに南海トラフや巨大台風など重なる「複合災害」となった場合、日本経済がどれほどのダメージを受けるのかを考察している。その結果は、多くの日本人には受け入れ難い最悪のシナリオが浮かび上がったという。

 「支援」の名のもとで中国マネーが大量に日本に流れ込み、徐々に中国の経済的支配が強まっていくというのだ。

 世界第3位のGDPの日本を「カネ」で支えられるのは、体力的にGDP世界一の米国と世界2位の中国だが、米国はよその国の復興に金を出すほどの余裕がない。一方、中国はアフリカの債務超過国に膨大なカネを貸し付け、「植民地化」を進めるなど、苦しい国の足元を見ることに慣れている、というのが根拠である。

 また、既に日本でも、中国人富裕層が銀座の土地を買い漁り、日本人が廃れるまで放置していた京都の町家が並ぶ一角を、中国資本が買い占めて再開発しているなどのケースが増えてきていることを踏まえ、こう主張している。

 『このような中国資本の勢いを踏まえれば、地震で日本が壊滅的なダメージを負った際に、その混乱に乗じて、日本の様々なところに中国資本が入ってくることは、十分にありえます。財政が急速に悪化している日本が、その中国マネーを拒否することはできません。(中略)結果、大量の中国資本が日本中に投下され、日本社会で中国人資本家の発言力と存在感が増していくでしょう。そして、何年かが過ぎて気がつけば、日本の「中国の属国」になっていたーー考えたくないかもしれませんが、「百パーセントない」とは言い切れません』(P.243)

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