「自然災害→経済破綻」その後どうなるのか 最悪のシナリオスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

» 2019年09月24日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

「中国の属国」になってしまう危険性

国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか』(デービッド・アトキンソン/講談社)

 なんてことを口走ると、「確かに日本は自然災害が多いが、これまで何度も乗り越えてきている。不安をあおるトンデモ話を触れ回るな!」とキレる方も多そうだが、これは筆者がテキトーに思いついたような話ではなく、自然災害の専門家からは以前から言われていることだ。

 理由は、首都直下型地震と南海トラフ地震という2つの巨大地震だ。東日本大震災の震源地である三陸沖で、定期的に巨大地震が繰り返しているのと同様に、これらも「いつか分からないが近い将来、確実に起きる」という類の自然災害である。

 来るべき「Xデー」に備えて、政府も47兆円とか170兆円なんて被害額を試算して警鐘を鳴らしているが、実はこれはかなり大甘な見通しである。政府が想定した被害は建物やインフラが壊れたなどの「直接被害」だけで、先ほど述べた地震から始まる、被災者の経済的困窮などの視点はスコーンと抜けているのだ。

 公益社団法人「土木学会」が阪神淡路大震災で神戸市が受けた経済被害を参考にして、20年間でどれほどの「間接被害」になるのかを算出しているが、そこには驚きの数字が出ている。

 なんと、首都直下型地震で778兆円、南海トラフで1410兆円というのだ。

 日本の名目GDPは550兆円。つまり、近い将来起きるこの2つの巨大地震によって、「オリンピックと万博でバブル景気復活!」「外国人観光客とIRでウハウハだ!」なんて景気のいい話は軽く消し飛んでしまうということだ。

 人は自分の想像を超えた現実を突きつけられると、とにかく否定する生き物なので、この試算から頑なに目をそらし、「日本人の絆でがんばればきっと乗り越えられる!」とか「日本人は世界中から愛されているのでいろいろな友好国から支援が届く!」とムキになる人たちの気持ちもよく分かる。

 が、そういう現実逃避を続けて、この「カネ」の問題を放ったらかしにしていると、巨大地震を機に日本は「途上国」に逆戻りして、ヘタすれば「中国の属国」になってしまいますよ、とかなりショッキングな警鐘を鳴らす人もいるのだ。

 先日、『国運の分岐点 中小企業改革で再び輝くか、中国の属国になるか』(講談社)を上梓した、デービッド・アトキンソン氏である。

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