アップルの“告げ口”でサムスンに危機? 貿易戦争を揺るがす一声世界を読み解くニュース・サロン(2/5 ページ)

» 2019年10月17日 07時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]

関係が変化? アップルとトランプ

 そもそも、クックとトランプは特に良好な関係ではなかった。というのも、クックは16年の米大統領選の段階では、トランプの対抗馬だった民主党のヒラリー・クリントン候補を支持。反対にトランプも、選挙戦ではアップルを名指しで批判し、「不買せよ!」とまで発言していた。

 トランプが就任した後も、クックはトランプが決して歓迎しないような発言をしている。17年1月にトランプが、特定7カ国の国民に対して米国への入国禁止を発表すると、クックは「私たちはこの措置を支持しない」と社内に説明したことが大々的に漏れ伝わった。

 また17年6月にトランプがパリ協定(地球温暖化対策の国際的枠組みを定めた協定)から離脱した際も、「離脱は地球のことを考えると過ちである」とTwitterでコメント。その直後にトランプが大統領令で「米国テクノロジー評議会」を立ち上げて米IT企業のリーダーたちをホワイトハウスに招いているが、出席したクックは暗い表情でトランプの隣に座っていたことが当時ニュースをにぎわせた。

 ちなみにこの集まりにはジェフ・ベゾス(Amazon)、エリック・シュミット(Alphabet)、トム・レイトン(Akamai)、ブライアン・クルザニッチ(Intel)、サティア・ナデラ(Microsoft)といった、当時のそうそうたる顔触れが一堂に会していた。

 さらにいうと、17年、バージニア州シャーロッツビルで白人至上主義団体のデモ活動で死者が出る騒ぎになると、トランプが白人至上主義者を擁護するような発言をした。このときクックは「大統領に合意することはできない」とコメントしている。

 そんな状態だったのが現在のような関係になったのは、クックのビジネスマンとしての「能力」が背景にあるようだ。社会的にそうした発言をしつつも、ビジネスパーソンとして、水面下で個人的にトランプとの関係はきちんと築いていたらしい。

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