北陸新幹線の何が特殊かといえば「電力」と「勾配」だ。
新幹線は車両の出力が大きく、路線は長距離。そこで高電圧で電力供給ができる交流を採用した。そして、家電でも配慮されているように、交流電力は東日本が50Hz、西日本が60Hzだ。東海道新幹線は将来の山陽新幹線延伸を見越して、相対的に短距離の関東側も60Hzとして全線を統一した。
北陸新幹線も東日本と西日本をまたぐけれども、電力周波数は地域に合わせ、電車側で周波数変更に対応した。具体的には、東京〜軽井沢間が50Hz、軽井沢の先から糸魚川駅手前まで60Hz、糸魚川駅付近が50Hz、糸魚川の先は60Hzだ。北陸新幹線は、この2つの周波数に対応した電車しか走れない。
さらに「勾配」の問題がある。新幹線はスピードを上げるため、最大勾配を15パーミルに設定している。1000メートル進むと15メートル上る角度だ。しかし、北陸新幹線の設計時にこのルールを適用すると、勾配を抑えるために大きく迂回するか、ずっとトンネルになってしまう。人気保養地の軽井沢も無視できない。そこで特例として、高崎駅直後から、新幹線としては急勾配の30パーミルとし、駅付近だけ平たんにした。
電車が勾配で配慮する点は、モーターの出力ではなく、ブレーキの性能だ。長い下り坂で接触型のブレーキをかけ続けると、発熱によってブレーキが効かない。そこで、クルマのエンジンブレーキのように、非通電時のモーターの抵抗力で速度を保つ仕組みが必要だ。鉄道の場合は抑速ブレーキという。北陸新幹線の車両はこの仕組みが必要だ。
E2系の北陸新幹線仕様は2つの周波数に対応し、抑速ブレーキを搭載している。しかし、同じE2系でも東北新幹線仕様は対応していない。北陸新幹線仕様は東北新幹線でも走行できる。しかし、その逆、東北新幹線仕様は北陸新幹線には入れない。
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