「じゃがりこ」が350億円の“お化け”商品に成長したワケ “いじられ”力と独自製法がカギ2020年に25周年(2/5 ページ)

» 2019年10月30日 06時00分 公開
[昆清徳ITmedia]

じゃがりこが誕生した経緯

 戦後、広島で創業したカルビーは1964年に「かっぱえびせん」を発売して以降、ほぼ10年ごとに大型商品を生み出して成長してきた。現在の看板商品であるポテトチップスが1975年、シリアルの「フルーツグラノーラ」(現在はフルグラ)が91年、じゃがりこが95年、皮つきじゃがいもスティックの「じゃがビー」が2006年といった具合だ。

 じゃがりこの開発がスタートしたのは1992年。松井氏は「当時、当社の商品は袋菓子が中心でした。ガムやチョコレートのように、外でも気軽に食べられるような商品を開発する狙いがありました」と説明する。

 そこで、若手中心のプロジェクトチームが発足した。3年間の試行錯誤を経て、生地に味を練りこんだスティックタイプの商品を生み出した。また、カップに入れた商品というのはカルビーにとっては初めての試みだった。ポテトチップスのように味が付いたパウダーをポテトにまぶしていないので、手が汚れにくいという特徴があった。

 ちなみに、揚げたスティック状のポテトをカップに入れる商品としては、森永製菓が1978年に「ポテロング」を発売している。この分野でカルビーは後発なのだ。

17歳の女子高生を狙う

 ポテトチップスが男子中高生や子どもがいる30〜40代の主婦をターゲットにしていたのに対し、じゃがりこは女子高生向けに開発された。当時、女子高生の間では「プリクラ」や「ルーズソックス」などが流行しており、社会への発信力が強い存在だった。じゃがりこが入っているカップは、女子高生がバッグに入れて持ち運びしやすいようなサイズにしている。また、女子高生にササる商品をつくることで、将来のユーザーになってもらう狙いもあった。じゃがりこの現在のメインユーザーは、30〜40代の主婦層とファミリー層だ。子どものころに馴染んだお菓子を、大人になっても家族と一緒に食べている。

 「コミュニケーションのターゲットが女子高生というのは、今も昔も変わりません。若々しい元気なブランドイメージを保つ目的があります。かつて、大人のユーザーに向けて、野菜を練りこんだ体にやさしい商品や、おつまみになるような商品を出したこともありました。ですが、今は若い人に向けた商品開発をしています。若い層から他の年代にも広がるようにするためです」(松井氏)

 じゃがりこは、お客から「楽しい」と思ってもらえるようなパッケージやネーミングを工夫している。例えば「じゃがりこ」という商品名は、開発担当者の友人である「りかこさん」と関係がある。りかこさんがおいしそうに食べる様子を見て「じゃがいも+りかこ→じゃがりかこ→じゃがりこ」とした。イメージキャラクターのキリンは「食べだしたらキリンがない。」というキャッチフレーズから生まれた。また、発売から10年後には商品のバーコードにキリンなどのユニークなイラストを盛り込む「デザインバーコード」を考案した。

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