消費税は弱者に厳しいというウソ 〜逆進性という勘違い〜専門家のイロメガネ(4/8 ページ)

» 2019年10月31日 08時10分 公開
[中嶋よしふみITmedia]

給付の累進性

 保育料なんて数年の短い期間じゃないか、と思われるかもしれないが、給付の段階で累進性が働く公的な制度を列挙してみると、以下の通り保育料以外にも多数ある。

  • 保育料
  • 医療費
  • 遺族年金
  • 住宅ローン減税
  • 奨学金
  • 児童手当
  • 育休・産休手当

 医療費は通常3割負担だが、入院等で負担がかさんだ際は極端に負担が増えないように上限が設けられている。これを高額療養費制度という。

 上限は収入に応じて5段階に分かれているが、一般的な「区分ウ」※のケースは以下の計算式の通りだ。

  • 8万100円+(総医療費−26万7000円) ✕ 1%

 医療費が約8万円を超えると、あとはどんなに医療費が増えても実際の負担はほとんど変わらない。3割負担でもなお100万円の医療費が発生した場合ならば、8万100円+7330円でその月の支払額は8万7430円となる。

しかし、最も収入が多い「区分ア」※の計算式は以下の通りだ。

  • 25万2600円+(総医療費※1−84万2000円) ✕ 1%

 このケースで100万円の治療費が掛かった場合、25万2600円+1580円=25万4180円と、ウのケースと比べて3倍も多い。

 収入が多い人は税金も社会保険料も負担額は多く、所得税は税率も高まる。高所得者にとっては「多額の税金や保険料を納めているにも関わらず公的サービスの負担まで重い」と、常識的に考えて働くことがバカらしくなる状況だ。踏んだり蹴ったりとはまさにこのことだと言わざるを得ない。

区分ウ(標準報酬月額28万円〜50万円)(報酬月額27万円以上〜51万5千円未満)

区分ア(標準報酬月額83万円以上)(報酬月額81万円以上)


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