ゲームをスポーツ競技として捉える「eスポーツ」。近年では3月に「全国高校eスポーツ選手権」が開催されるなど、隆盛を見せている。だが、プロスポーツとして発展していくには、ゴルフやテニスのように選手が生計を立てられる賞金制度作りが欠かせない。
海外のeスポーツの大会では、賞金総額30億円を超える大会も開かれている。これはゴルフのメジャー大会よりも規模が大きい金額だ。一方、TVゲーム“発祥の国”といえる日本では、そこまでの規模のものはない。法制度の関係から、高額賞金を目玉にした大会の運営が難しいためだ。
そんな中、賞金総額1億円のeスポーツ大会を開催したタイトルがある。ミクシィのブランド「XFLAG」が開発・運営する「モンスターストライク」(以下「モンスト」)だ。「モンスト」は、味方のモンスターをピンボールのように引っ張り、敵に当てて倒すゲーム。最大4人まで協力して遊ぶことができる。今年7月に「モンスト」のアジアNo.1を決めるeスポーツ大会「モンストグランプリ2019 アジアチャンピオンシップ」が開かれ、国内大会では初の賞金総額1億円の大会となった。前編では賞金総額1億円! 14万人超が決勝を“観戦”した「モンストグランプリ」運営責任者が明かす「eスポーツの隆盛」に欠かせないものをお届けした。
記事の後編では、賞金総額1億円という「不可能を可能にした仕掛け」はどこから生まれたのか、大会の運営責任者であるミクシィの田村征也執行役員に聞いた。
――「モンスト」はガチャの要素でも知られているタイトルだと思います。ガチャが絡むと、「強いキャラクターを持っている」という、技術とは別の要素が競技に影響を与えてしまいそうですが、その辺りをどうカバーしていのでしょうか。
実は、eスポーツの競技に使われるアプリは「モンスターストライク スタジアム」という別のアプリになっています。こちらはガチャもなく、課金の要素もありません。全員が同じ条件なので、公平に大会を行えるようになっています。値段も「モンスト」同様に無料なので、大会に参加したい方はその場でアプリをダウンロードすれば参加することが可能です。
――なるほど、競技専用のアプリを別に用意しているんですね。
「モンスト」自体は、「他の人より良いキャラクターがほしい」となると、課金をしてなるべく多くガチャを回すことによって、自分のほしいキャラクターが手に入りやすくなるというビジネスモデルになっています。「モンスト」とは別のアプリを準備することによって、全く別のビジネスモデルが展開できるというわけですね。
――競技用の別アプリとして展開することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。
賞金制大会の開催に当たっては、景品表示法の問題が浮上してきました。景表法の問題というのは、パッケージのソフトを販売していると、そのソフトを使った大会の賞金は、パッケージ金額が5000円未満であれば価格の20倍まで、5000円以上であれば10万円まで、または「懸賞に係る売上予定総額の2%まで」に制限されるというものです。パッケージの金額が無料でも、課金要素があった場合には同様です。
「モンスターストライク スタジアム」は当初から無料で提供していたのですが、最初は「モンスト」本体で持っているキャラクターをリンクさせて遊ぶ、というモデルだったので、このモデルだと間接的に課金とひも付いてしまう恐れがありました。そこで、現在のような、アプリ本体が無料で課金要素も一切ない形にしました。こうすることで、景表法の適用から外れるようにしたわけです。
――1回目となる「モンストグランプリ2015」は賞金がない大会でしたが、日本の大会では異例の高額賞金が出る大会へと成長していきます。どこが転機となり、この間、どのような変化がありましたか。
19年で5年目になるわけですが、大きい転機になったのは、18年2月に一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)さんが立ち上がり、プロ認定を始めたことですね。このころからわれわれのeスポーツの活動自体も世の中に注目されるようになったと実感しています。大会の様子は毎回YouTubeでも配信しているのですが、この視聴者数も17年から18年にかけて2倍ぐらいに増えました。18年は社会的な注目を集めるようになったという意味でも、eスポーツにとって特に印象的な年だったと感じています。
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