「コンビニの書店強化」が大コケすると思う、これだけの理由スピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2019年11月26日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

コンビニが「間接的に雑誌を開発」

 近くにあるコンビニを4〜5店まわって雑誌の棚を見ていただきたい。セブンでもローソンでも同じような品ぞろえではないだろうか。「え? こんなマニアックな雑誌をコンビニに置くの?」なんてことはほとんどない。ここに置かれるのは、コンビニ本部が「売れる」と判断したものだけ。中には、コンビニのバイヤーが表紙や編集方針にあれこれ指示をして生み出されるPB的な「限定雑誌」もあるのだ。

 書店が減っているので、コンビニに置かれない雑誌の売り上げは厳しい。中には休刊に追い込まれる雑誌も出てくる。つまり、世の中に残って、それなりに売れる雑誌はコンビニが「間接的に開発した雑誌」なのだ。

売れる雑誌はコンビニが「間接的に開発した」(写真提供:ゲッティイメージズ)

 コンビニの書店機能が強化されることは、この構造がそのまま書籍にも適応されてるということだ。書店が消えていく代わりに、コンビニがその機能を担うのは一見すると、出版文化を守っているような錯覚に陥る。しかし、本質に目を向けてみれば、コンビニ本部のマーケティングと商品開発的に認められた本だけが生き残っていくことであり、それは多種多様な価値観や視点を提供する出版文化の「死」を意味していることでもあるのだ。

 というようなことを言うと、「そんなこと言っても、本が売れないんだからしょうがないだろ! コンビニももうけて、読者も手軽に買える、何が悪い!」とキレる出版・書店関係者も多いかもしれないが、そのように安易に「とにかく売れる棚を抑えてじゃんじゃんさばいちまえ」という方針を進めてきた結果が、今の書店の苦境を招いた可能性もあるのだ。

 その辺りがコンビニの書店機能に反対する3番目の理由である『「書店が生き残るための強み」を殺すことになる』だ。

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