「コンビニの書店強化」が大コケすると思う、これだけの理由スピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2019年11月26日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 11月24日、産経新聞に『コンビニが「読者」を呼び込む 書店が減少する中、読書ニーズを掘り起こせるか』という記事があった。

 コンビニが客と本を結びつける場として注目を集め始めているという内容で、大手3社の取り組みを紹介している。セブン-イレブンはお得意のPBということでオリジナル新書を販売、ローソンは書籍棚を充実、そしてファミマは書店との一体型店舗が取り上げられていた。

 ご存じのように、最近のコンビニは書店機能が強化されている。かつては雑誌棚の3分の1くらいまで侵食していた成人誌コーナーも隅のほうへと追いやられ、新書やムックが面陳されているのはもはや常識として、店によっては、ちまたで話題のベストセラーが平積みされるなんてことも珍しくない。

消費者に支持されるのか? コンビニの書店機能(写真提供:ゲッティイメージズ)

 という状況の中で、先ほどのようなニュースを耳にすると、「うちの近くの書店が潰れちゃったから、そういうコンビニが増えるのはありがたいかも」とか「コンビニが書店のようになれば、若者の“本離れ”も食い止められるのでは」と好意的に受け取る方も多いことだろう。

 が、筆者はそれらとまったく逆の見方である。

 短期的には「売れた」「便利だ」となるかもしれないが、中長期的には大コケするのではないかと思っている。コンビニの雑誌と同じ道をたどって売り上げが伸び悩み、陳列や返品作業などでバイト店員の負担を増すだけという結果になってしまうのだ。

 いや、もっと言ってしまうと、もしコンビニが本格的に「客と本を結びつける場」になってしまったら、いよいよ日本の出版文化はおしまいである。電子書籍だ、Amazonだと苦境に立たされる書店にトドメを刺すようになことになるからだ。

 いったいどういうことか。理由は以下の3つである。

(1)構造的な不況にある業態同士が組んでも良い結果にはならない

(2)コンビニ本部主導の本づくりが進行して出版文化の多様性が失われる

(3)「書店が生き残るための強み」を殺すことになる

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