新人がフォーカスして見ることに慣れてきたら、複数の見どころを伝えるようにしましょう。そうすることで育成効率が上がっていくからです。ここでは前職の研修の例で説明します。研修では外部から招いた講師に登壇いただく際、社員の前でオープニングの司会を務めることがあります。初めて新人にその司会のシーンを見せる際は、次のように伝えます。
「いまから外部講師を招いて、オープニングでの司会シーンを見てもらいますが、3つのポイントに注意して見てください。1つ目は、第一声の声量。2つ目は第一声を発するときの表情、そして3つ目は、参加者を見る際の視線の動かし方。まずは、この3つを見て、気が付いたところをメモしてください」。
このように指示して手本を示したら、別途時間を作って「私を社員と見立てて、先ほどの3つを意識して実際にオープニングの司会をやってみてください」と伝え、ロールプレイングを通じて、上記3つのポイントの理解度を確認していきます。OJTにおいて手本を示すときは、見どころを先に教えてから実践させたほうが効率よくスキルが身につきます。「取りあえず見てね」だけでは手本を示したことにならないのです。
以上、OJTにおいて新人を効率的、効果的に育成する方法を2つの視点からお伝えしました。業務を教えるときは「分けて教える」、手本を示すときは「見どころを教える」。ぜひ試してみてください。
人事系コンサルティング会社を経験後、2006年ソフトバンク(旧ボーダフォン)入社。ソフトバンクユニバーシティの立ち上げに参画し、研修の内製化をリードする。
日本HRチャレンジ大賞人材育成部門優秀賞、ソフトバンクアワードの受賞をはじめ、アジア初で米国教育機関よりPike’s Peak Awardを受賞。その他、千人規模の新人研修やエルダー(OJT、メンター)教育にも携わり、新人、若手の早期育成にも貢献する。
2015年に講師ビジョン株式会社創業。社内講師の育成トレーニング、OJTトレーナー研修、新人研修などを提供する。近著に『10秒で新人を伸ばす質問術』(東洋経済新報社)がある。
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