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「脱パワハラ」はどうすれば? 目標第一の営業部長が苦悩ケースで学ぶ組織の変革(2/5 ページ)

» 2019年12月05日 11時00分 公開
[大島奈櫻子ITmedia]

変革前の大橋製造

 小売店向けにキッチン用品や家電を製造・販売する大橋製造(仮名)は、業界大手の空白を狙った商品を企画し、絶妙な品質と価格のバランスでシェアを伸ばしてきた。業績成果第一主義(歩合制を主軸とする評価制度)で厳しい職場環境だったが、給与水準が高いため、若くして稼ぎたい社員が多く集まっていた。

 だが、売り上げ650億円、社員数400名の規模となり、業界大手の一角を占めるほど成長したことで、成長のひずみが現れ始めていた。具体的には、業績拡大を急ぐあまり、大橋製造でもパワハラの問題が表面化し、裁判沙汰にもなった。ブランドイメージの毀損を恐れた役員陣は、パワハラ型のマネジメントを禁止するようになり、マネージャー陣はパワハラを恐れて部下に対して厳しく接することができず、それに伴い業績も伸び悩んでいた。

 また、近年採用された若手社員は急成長期に入社した人財とは価値観が異なり、業績一辺倒の目標設定にはついていけないと感じていた。結果として若手の離職率、休職率が高止まりしていた。

 そうした現状に危機感を抱いていた人事課長の永島(仮名)は、営業の本丸である第一営業部にメスを入れるため変革の一歩を踏み出そうと考え、「評価制度の見直し」と「若手人財への教育制度の導入」を提案した。しかし、その提案は、第一営業部部長の大澤(仮名)から強い抵抗を受けることになった。

 大澤部長の心理はこうだ。「営業部なんだから業績成果第一でどこが悪いというんだ?」「教育やコミュニケーションにもっと時間を割くようにと言うが、そんな時間を費やす暇があったら、少しでも数値目標達成のために時間を使わせたい。業績ノルマは変わらないのに新しいことをやれなんて現場の事が分かっていないのではないか」。

 もともと大澤自身は、営業一筋のたたき上げで部長に昇進した人物であり、上司からの厳しい言葉や問い詰めに屈することなく、逆に悔しさをばねにして成果を出してきた経歴があるからこそ、部下に対しても業績成果第一だと言い聞かせ、徹底的に管理して達成させるマネジメントがよいと信じていた。

 ところが今になって、「そういうやり方はよくない」と会社は言う。世の風潮があるのは分かるが、パワハラを恐れていたら部下に厳しく迫ることができないのに、結果だけだせとは随分ないいようだ……。

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