イヴァーソン氏の説明を補足しよう。ボルボは長きにわたって、リアルロードでの実際の事故現場に自社の分析チームを派遣して調査し、それらをデータとして蓄積してきた。つまりこうした長年積み上げられたリアルな事故データのデータベースこそが、彼らの戻るべき原則になっている。
そうしたデータによって、リスクのシナリオを描き、また新技術によって起こる新たなクリティカルな状況を予測しながら、技術開発を行っている。
当たり前のように聞こえるかもしれないが、他社の動向や販売の数値ではなく、ブランドそのものの基礎を築くだけの事故データが膨大に蓄積されており、そこを基準にするからこそ、独自の安全思想が生まれてきていると、イヴァーソン氏は説明しているのだ。
例えば、日本で「ぶつからないブレーキ」を認可させるために、ボルボは自国の監督官庁の役人だけでなく、英国の保険会社のスタッフまでともなって、データを元に国交省を説得した。それがなければスバルのアイサイトも生まれなかった可能性が高い。データオリエンテッドな安全技術のあり方について、ボルボの方法論は非常に参考になるのではないだろうか?
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う。
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