クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向
連載
» 2019年12月16日 07時10分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:自動車メーカーにとっての安全性と、ボルボ (2/5)

[池田直渡,ITmedia]

安全と商品性の相克

 2つ目のタイプは、例えばダイムラーやBMWだ。これらの会社は古くから大パワーユニットを搭載する特殊モデルを持っていたが、それらは価格も飛び抜けて高く、限られたユーザーに向けた限定モデルだった。しかしながら、いつしかそういうハイパフォーマンスモデルはどんどん増殖して、今や各モデルのトップグレードという扱いになっている。300馬力オーバーはゴロゴロしているし、500馬力級も珍しくない。そうやって強烈な馬力をユーザーに与えた上で、トラクションコントロールをはじめとする電制システムで、枷(かせ)をかける。「一応の安全対策は行いました」ということだろう。

 自動運転でも同じだが、昨今のドイツ車からは、「新技術酔い」のようなものを感じることが多い。エンジニアとして新技術にワクワクしないならそれは資質的に向かないと思うが、それ以前に企業には社会の一員としての責任がある。それが第一であるはずなのに、優先順位が揺らいでいる感じがする。それが新たなテクノロジーを投入したくて仕方がないマッドサイエンティスト的なリビドーによるものか、それともビジネス的野心なのかは分からないが、筆者からは少々無軌道に見える。

 ただし、ここは簡単な話ではない。クルマという商品につきまとうヨコシマな欲望を全部無視して、完全に実用機能に絞ったクルマでいいのかといわれると、それでは商品として成立しない。そうやっていけば「カーシェアで十分」という結論しか残らない。

 だからおのずとグレーゾーンがあるのだが、そういう派手な商品特性を持ったクルマがマーケットを刺激し、世界経済の発展に貢献しているという面も評価せざるを得ない。

 さて、3つ目のタイプだ。ここには主に日本の自動車メーカーが入ると思う。新技術については慎重な姿勢を取り、未成熟な技術の投入には良くも悪くも消極的。社会的責任を重視しているのは確かだが、一方で厳しさを増すグローバルな競争を戦っていくには余りに消極的なのではないかという面もある。

 3つのタイプの中で、明らかに正しいのはどれだといえるものではない。それぞれに一長一短がある。

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