クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

売れるに決まっているダイハツ・ロッキーとトヨタ・ライズ池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/8 ページ)

» 2019年12月23日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]

 機構の狙いは、高速巡航時のエンジン回転数の低減と、CVTの伝達効率の改善だ。CVTは2つのプーリーが隣接する関係で径の拡大に限界がある。だから最小ギヤ比と最大ギヤ比の比率(レシオカバレージ)が大きくできないのが構造的問題だった。そこに遊星ギヤを使うことでレシオカバレッジを拡大できる。

 もう1つは、プーリーの巻き掛け径が小さい領域、つまりV字になった谷の底の方を使うときは、ベルトの曲がりがキツくなって効率が落ち、耐久性面でもマイナスだ。こういうシチュエーションでトルクを平歯車側に流してやることで、プーリーがベルトを挟み込む油圧を下げ、効率を上げることができる。

 つまり低速域の加速時はレシオが自由に変えられるCVTのうま味を使い、高速時などには機構が単純で損失が少ない平歯車を使う。その間に自動的に両経路を併用して、最も効率良くトルクを伝える領域があるという寸法だ。この機構を考えた人はちょっと天才かもしれない。

 さて、4WDは前後のデフの間に置かれるセンターデフを電制多板クラッチを用いて制御してやる方式で、リヤへのトルク伝達を0から50%まで可変制御できる。

ロッキー/ライズに搭載されるのは中央のトルクコントロールAWD

 ボディデザインのみならず、機構的にもSUVらしい凝ったシステムが使われているといえる。リヤサスはこのクラスで標準的なトーションビームアクスルなので、いわゆるクロカン4WDと同じことができるわけではないが、このクラスのシステムとしてはかなり走破性が高いはずである。

 人がきちんと乗れて、荷物が積めて、車両感覚がつかみやすい。その上でSUVとして興味深いシステムを搭載している。商品性の高さに疑いの余地はない。

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