しつこいようだが、マネジメントの目的は組織目標を達成させることだ。そのためには、マネジャーが日頃から仮説を立てやすいよう、ざっくりと問題の箇所を特定できることが大事だ。そして、
「福岡営業所の若手の行動に、どうもムラがある。所長が最近変わってから、特に顕著だ」
「そういえば、埼玉営業所もそうだ。今期からルールに沿った行動ができていない。所長を交代させてからのような気がする」
と、大ざっぱに問題を捉えられれば、次にマネジャーは自分の頭でパターン分析できるだろう。
「ひょっとして、営業所の新任所長に十分な教育ができていないからだろうか……」
ここまで仮説ができたら、後は現場で確認すればいい。ベテランの所長と、新任所長の理解レベルなどを、ヒアリングしながらつかんでいくのだ。Excelで管理しているデータと照らし合わせ、仮説の精度を上げていけば、いずれ効果の高い解決策がひらめくだろう。このようにして、真実は、だいたいが現場で見つかるものなのだ。
現場で支援をしていて、つくづく思うことがある。それは、マネジャー自身の「考える力」が著しく衰えているということだ。
複雑なツールを使い、複雑な計算式を使って分析した方が真実に近づけると勘違いしている人も多い。もちろん企業によっては、そういう方法で解決するケースもあるだろうが、一般企業における、年間を通したマネジメントプロセスにおいて、ほとんどそのようなケースはないと私は断言したい。
考える力を養うには、先述した通り算式で考えることが必要だ。例えば「10」という答えを作るには、どんな算式があるのか。組合せを四則計算を使ってパッと考えてみよう。
「10」という答えを作るには、
など、無数の計算式が考えられる。
経営をするときも同じ、つまり結果は1つでも「やり方」は無数にあるということだ。だから、外部環境が猛スピードで変化している現代、過剰なIT武装をする前に、まずマネジャーの「考える力」を鍛え、アップデートし続けることが何より大事だ。それを怠って、情報システムに考えさせようとしてはいけない。
最後に、何より大事な話を書こう。一度Excelでマネジメント資料を作ったら、そこに魂を入れることだ。知人のITベンチャーの社長もそうしている。高度な分析ツールなど使わず、シンプルな資料を、毎日毎日、何度も何度も、穴があくぐらいまで眺めているという。
そうしていると、マネジメント資料に魂が入ってくる。ちょっとした数字の微差から、マーケットで何が起こっているか、現場で何が起こっているのか。その変化にすぐ気付くようになるのだそうだ。
だからマネジメントツールは、シンプルな方がいい。Excelの基本機能だけで完成するほどシンプルな方が、無駄のない、美しいマネジメントができるのである。
企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。
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