働き方改革上の必要性に駆られて、BIツールを中心としたITツールを導入する企業も多いだろう。しかし、当然のことながらツールを導入しただけでは業務改革を成し遂げることはできない。企業の中には、過剰なまでに不必要な“IT武装”をしてしまっているところも多い。企業の現場に自ら入り込み、目標を「絶対達成」させるコンサルタントの横山信弘氏が「IT武装」問題に切り込む。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。結果を出すための相談を経営者からよく受ける。しかし最近は、残念な相談も増えている。2カ月前にセミナーで知り合った社長から受けた相談は、特に残念だった。
「ビッグデータで顧客情報を分析し、営業活動を見える化することで、もっと営業の生産性がアップするはずだ。さらに、貢献度の高い社員の動きをAIでパターン分析すれば、公正な評価ができる。どう思うか」
私はしばらく黙って、どう返答しようか悩んだ。
カタチから入るのは悪くはない。私も昔、二輪車の免許を取得した後、3年間貯めたバイト代をはたいて買ったバイクは、当時流行していた「レーサーレプリカ」というタイプだった。プロのレーサーが乗っているバイクを模したもので、免許を取得したばかりの初心者が乗るようなモデルではない。
「初心者のクセに、レーサーレプリカなんか買いやがって」
と友人から嫌みを言われたが、とはいえ自分で稼いだお金だ。何に使っても構わないだろうと私は言い返した。
しかし、経営は個人の趣味でやってはならない。特に多額のコストがかかる投資は、慎重にすべきだ。
「そのように“IT武装”しようとしても、いつ運用を本格スタートできるか分かりませんよ」
そう私は返した。すると、
「そうなの?」
と社長が言うので、あきれてしまった。「オフィスに空気清浄機を設置するわけじゃないんだから、もっと慎重になってくださいよ」と突っ込みそうになった。経営の視点で考える場合、「コスト」はお金だけではない。時間も、労力も、コストとしてしっかり計上すべきなのだ。
「断言します。マネジメントのためなら、Excelだけで十分ですよ」
「え、Excel? Excelって、あの表計算ソフトの?」
「そうです。Excelだけで、9割はうまくいきます」
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