算式といっても、四則計算ができれば十分。つまり、必要なのは足し算、引き算、掛け算、割り算の4つのみ。例えば、自己資本利益率(ROE)や生産性は「割り算」で、客単価は「掛け算」、利益は「引き算」で導くことができる。
それ以外の複雑な計算でたどりつく指標だと、算式が頭に入らない。算式が頭に入らないということは、その根拠が分からなくなるということだから、人間はその指標の「値」を信じられなくなるし、いずれ使わなくなる。
意思決定に役立つと思い、「BI(ビジネスインテリジェンス)ツール」などの情報システムを導入しても、多くの企業はだいたい最初だけしか使わない。そうなると結局は、「勘」頼みのマネジメントに後戻りする。
「あのさあ、年末になって意欲的になるヤツほど、営業成績が安定しないもんだ。調べてみろ、第2課の高橋なんて、まさにそうだろ。最近、やたらと威勢がいいんだよ。春からあの調子でやれって言いたいよ、俺は」
こうしたマネジャーの感覚や勘、つまり「コンピュータ」ならぬ「“カン”ピュータ」の方が実際に使われてしまうのだ。
例に出した営業マネジメントについて、考えてみたい。
営業の活動をプロセスごとに分解し、それぞれの量を測るのに高度なツールは要らない。トーク技術のレベルも、しかるべきマネジャーがテストを繰り返し、5段階ぐらいで採点すれば事足りる。
それら行動の量とスキルの伸び具合を時系列で追っていけば、「意欲」のレベルも5段階ぐらいで分類できるのだ。そして、縦の軸を営業社員の「行動」、横の軸を「意欲」にして、分布図を作ればいい。そうすれば、どの行動プロセスと意欲が関連あるか、探っていくことができるだろう。縦軸を「営業成績」、横軸を「意欲」にしたり、「社歴」と「意欲」や「年齢」と「意欲」などに変えてみたりすると、それらの相関関係が分かるはずだ。
もっと細かく見てもいいだろう。「決裁者に対する商談」の量と「意欲」の関係はどうだとか。そこに「営業成績」という切り口を加えるとどうだとか。つまり、縦軸と横軸の切り口を変えるだけで、問題の箇所が分かってくるはずだ。問題の箇所が特定できれば、その問題をどうすべきかを都度考えればいい。
細かいデータは、営業社員や、そのアシスタントが日々蓄積すればいいだけだから、Excelの基本機能だけで事足りる。よほどのことがない限り、関数やピボットテーブルなども使う必要はない。
2000円も出せばExcelの解説書ぐらいすぐ手に入るし、朝から夕方までしっかり時間をとり、アレコレ手を動かせば、シンプルなマネジメントツールはいくつか出来上がる。そして翌日には運用段階に入ることができるだろう。
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