経営指標を見える化するために、人工知能(AI)やビッグデータを活用しようとする企業が増えている。
以前、AIの力を借りて、営業部門のベストプラクティス分析をしたいと、ある営業部長が言ってきた。最も成績のいい営業社員のトーク、行動、振る舞いなどを画像や音声認識機能を使ってデータ収集、蓄積し、そのパフォーマンスを分析したいとのことだった。伸び悩む営業社員の指導に生かすためだと言う。
私は止めたが、なんとその会社は、多額のシステム構築費用をはたいてツールを導入した。しかし、営業部の思惑をうまくパラメータ設計に反映できないなどの理由で手間取っているらしい。導入から半年近くが経過した今も、まだ運用段階に入っていない。
私から言わせてもらえば、AIの力を借りて営業マネジメントの精度を上げようだなんて、正直なところ、近所のスーパーへ買い物に行くのに戦車を使うようなものだと言いたい。オーバースペック過ぎて、逆にマネジメント効率が悪くなる。
マネジメントの目的は、「組織目標を達成すること」である。当たり前だが、「マネジメントすること」がゴールではない。だからこそ「手段を目的化」する思想は、痛々しく見える。
マネジメントがしっかり機能するためには、それこそシンプルであれば、シンプルであるほどいい。これは鉄則だ。また、意識すべき重要指標の「値」ではなく、その根拠となる「算式」を頭に入れておく必要がある。
例えば、営業利益であれば、
営業利益=「売上高」−「売上原価」−「販売費および一般管理費」
このような算式が頭に入っていないと、営業利益を上げるにはどうすればいいのか、瞬時に思い浮かばないだろう。
やたらと時短だ、時短だ、と言っているマネジャーは、単に労働時間を減らせば生産性向上につながると思い込んでいる。ただ、実際は生産性の「算式」が頭に入っていないと、何をどうすればいいのか理解できないのだ。
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