クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

2020年の中国自動車マーケット(前編)池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/5 ページ)

» 2020年01月06日 07時20分 公開
[池田直渡ITmedia]

 年明けの記事として、昨年のクルマを振り返る企画を2本続けて掲載した(前編後編)。となると次は2020年の自動車産業の展望から書き始めるべきだろう。

 テーマは中国マーケットだ。この10年間、自動車のグローバルマーケットをリードしてきたのは中国だった。今世紀が始まったとき、わずか200万台程度だった中国の新車販売台数は、17年には2912万台と約15倍に躍進し、驚くべきことに、グローバル販売台数の3分の1に達した。当然この20年間、世界の自動車メーカーは中国マーケットを最重要課題として、売り込みに目の色を変えて取り組んできた。

 ところが、その中国の自動車マーケットが、18年、約30年ぶりに前年比でマイナス2.8%となった。天安門事件の年以来のダウンと考えると少々不穏である。この先どうなるのかは気になって当然だろう。

大連の港(写真:ロイター)

中国マーケットの現状

 19年はまだ累計データが出ているのが11月末までで、通年の最終確定数値が出てこない。加えて統計によって商用車を含むか含まないかなど、車種のジャンルの絞り方の違いもあって、報道によって19年の下落幅には振れがある。しかし、それでも、おおむねマイナス8%から13%程度という衝撃的な下落が予測されている。当然ながら傾向としては、商用車より、景気に左右されやすいパーソナルカーが厳しい。2桁ダウンの数値が出ているのはパーソナルカーだ。

 しかもどうやら翌20年の予測も芳しくない。つまり3年連続でのマイナスということになりそうで、世界一自動車が売れるマーケットのこれだけ大きな変調は、自動車メーカー、ひいては自動車産業全体への大きな影響が予想される。

 例えば、利益の40%を中国から上げるといわれているフォルクスワーゲンにとって、中国マーケットの2桁ダウンは脅威になるだろう。しかし同社にとって幸いなことに、今のところダウン幅はメーカーの国によって結構差がある。グラフは昨年対比だが、総数の積み上げで見ると、最も下落幅が大きいのが中国ブランド各社、次に米国ブランドという順で、ドイツブランドは影響が少なく、韓国はかろうじてプラスにいる。しかしそのドイツと韓国を上回って、最も堅調なのが日本のブランドだ。しかしこの傾向がどこまで続くかは保証の限りではない。

中国でのブランド別自動車販売台数シェア(2018年)
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