日本を混乱させた中国企業「500ドットコム」が、うさんくさく感じる3つの理由スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

» 2020年01月14日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

中国政府の影がちらつく

 では、ひるがえって500ドットコムはどうか。

 先ほどの同じ講演内で「モノのインターネット(IoT)を介して物理的ハードウエアとお客様のモバイルデバイスをつなげ、ハイレベルな利便性と快適さをお楽しみいただける、真にスマートで安全な統合型リゾートを構築すべく、包括的なIT基盤を整備させていただく」(同上)と述べているように、実績のある「オンラインカジノ」での参入を考えていたわけだが、先ほども触れたように、「IR」の中で何かをしてきた実績はゼロだ。

 国策である以上、最初にできる3つのIRは絶対に失敗できない。ということは、多数のカジノ運営実績があって信頼に値する企業が選ばれるはずだ。少なくとも、新参者のオンラインカジノ企業に任せるわけがない。つまり、500ドットコムは日本市場参入レースの中では「書類選考落ち」というポジションなのだ。これは政治家に小遣いを渡してどうにかなるようなレベルではない。

 そんな負け戦の中で、こんなベタベタな汚職へと動くだろうか。動くわけがない。なぜそんなことが断言できるのかというと、500ドットコムには実績不足以前に「落選確定」の材料があるからだ。それが(2)の「筆頭株主が習近平主席に近い清華紫光集団」ということだ。

 清華紫光集団は、国家重点大学である清華大学が運営する中国最大の半導体グループで、昨年11月、エルピーダメモリの元社長、坂本幸雄氏を高級副総裁および日本子会社の最高経営責任者(CEO)に起用したことでも注目を集めた。だが、それよりも清華紫光集団が有名なのは政府との距離の近さである。清華大学が胡錦濤前国家主席、習近平国家主席をはじめ政府の要職を多く排出していることから、中国共産党が経済発展を目指すための「国策企業」と目されているのだ。

 そんな中国政府の影がちらつく企業に、日本の国策であるIRに参入させるのは普通に考えたらありえない。それは差別だとかなんだだとではなく、安全保障上の問題だ。

 そのあたりは、米国が、清華紫光集団と並ぶ国策ハイテク企業「華為技術(ファーウェイ)」の製品を使わないよう友好国に要請していることがすべてを物語っている。

 つまり、IRだろうが、オンラインカジノだろうが、日本人の個人情報を容易に収集できる立場に、500ドットコムを参入させることは、自衛隊や中央省庁の通信システムをファーウェイに丸投げするくらい愚かな行為なのだ。

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