日本を混乱させた中国企業「500ドットコム」が、うさんくさく感じる3つの理由スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

» 2020年01月14日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

IR計画をパアにすること

 では、なぜ人口67万人のマカオが優等生でいられるのかというと、言うまでもなく歳入の8割を多叩きだす「カジノ」のおかげなのだ。

 しかし、そんなマカオの平和がじわじわと揺らぎつつある。14年からカジノの売り上げがじわじわと落ち込んでいるのだ。18年にはなんとか前年比を上回って日本円で約3兆7000億円になったが、今年も低迷が続き、ピーク時の13年の5兆円規模に比べるとかなり落ち込んでいるのだ。

 理由は、習指導部が同時期から力を入れてきた反腐敗キャンペーンでカジノを用いたマネロンに目を光らせているからとか、中国経済が失速してきたからとかと言われているが、シンプルに客を「競合」に持っていかれていることも無関係ではない。北京や上海からのアクセスが良い韓国には外国人専用カジノが多くある。また、シンガポールにもマリーナベイ・サンズ、リゾート・ワールド・セントーサという2つのIRが開業して右肩上がりで客を伸ばしている。東アジアにIRが乱立することでカニバリが始まっている。要するに、「競合」が増えてきたのだ。

 そこで想像してほしい。そんな調子で「マカオの平和」が揺らいできているところに、北京や上海からアクセスの良い日本でIRが3つも設置できると知ったとき、中国共産党が何を考えるかを。

 これ以上、周辺に競合が増えればマカオのカジノの売り上げはさらに落ちる。上海から大阪は1362キロでマカオへ行くのとそう変わらない。また、上海から沖縄はわずか831キロ。自国の観光客も一気に日本にもっていかれる恐れもあるだ。経済がうまくまわらなくなれば、不満は中国共産党に向けられるのは歴史が証明している。このような事態を避けて、マカオを香港の二の舞にしないため、中国共産党としては「脅威の芽」を潰すしかない。

 そう、日本がせっせっと進めているIR計画を白紙に戻してもらうのだ。

 この国で政策をストップさせるのは簡単だ。政治家の「疑惑」がポンと浮かび上がって、マスコミが追いかければ、あっという間に世論調査で「見直すべきだ」という声が大多数を占める。そして、選挙のボロ負けを恐れる政権与党は、とりあえず支持率回復のためにクサイものにはフタをする。

 つまり、最初の「疑惑」だけをどうにかつくってしまえば、あとは世論が「信用できない」「とりあえず止めるべきだ」と勝手に政策を潰してくれるのだ。

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