監視がエスカレートすると、社員は反発する。頭では理解できても、感情が先に出てしまうからだ。すると、監視の「穴」を探そうとする者も出てくるだろう。物理的にシャットアウトすると、ジタハラ(時短ハラスメント)につながることもあって、こうなると、もういたちごっこだ。
繰り返しになるが、組織改革は個人個人の意識を変える努力がなければ、成し遂げられない。このプロセスを飛ばして、強硬策をとるべきではない。そもそも、なぜ人は粉飾しようとするのか? その心理を理解することから、始めていこう。
「粉飾決算」も「粉飾残業」も同じ。粉飾する人が、「思考停止」状態になっていることが、問題だ。さらに、会社側が強硬な姿勢をとると、組織全体が「思考停止」になってしまう恐れがある。これが怖い。
「風邪は万病のもと」とも言われる。工夫せず、一度安易な抜け道を探そうとすると、このような思考はクセになる。組織のあちこちにほころびが出はじめ、モラルハザードへと一直線なのだ。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。これまでにいただくオファーの大半は「本業による売上目標の達成」を支援することだった。ところがこの1〜2年で、残業削減の支援も大幅に増えた。
当然だろう。売上や利益目標を達成できなくても「違法」にならないが、規制上限をオーバーした残業は「違法」になる。経営者の本気度はマックスだ。このような本気の経営者と現場支援に当たってきた。そんな立場だから、言えることがある。
それは、多くの人が想像している以上に、残業削減は難易度が高い、ということだ。甘く見ていると足をすくわれる。なぜなら、残業削減は「業務改善」ではなく「組織改革」だからだ。
組織風土は、人間の思考パターンそのものの集積だと私は考えている。そして、思考パターンは過去の体験の「インパクト×回数」でできている。だからこそ、そう簡単に変えられるようなものではない。ことベテランであるほど、現状維持バイアスがかかってしまう。
ゆえに、地道なケアや、組織と従業員に合わせたアレンジメントが必要なのだ。
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