楽天の「送料無料」は大丈夫なのか ロジックが微妙スピン経済の歩き方(4/5 ページ)

» 2020年02月04日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]

共通ルールが「ちっともハッピーではない」

 こういう社会の感覚が広まっている昨今、巨大ECモールが「送料無料」を出店者にゴリ押ししている、というようなニュースが飛び込んだらどうなるか。「出店者に負担を強いるのではなく、自分たちで払え」「送料負担させるなら出店料を下げてやれ」なんて感じでモール側を批判する人たちもあらわれるはずだ。

 企業のリスク対策を生業としてきた立場で言わせていただくと、このイメージ悪化はナメないほうがいい。この手のビジネスをしている企業にとって、「社会の感覚」とかけ離れたメッセージを出すことは、企業の存続を脅かすほどの致命的なダメージを引き起こす恐れがあるからだ。

 分かりやすいのが、セブン-イレブンだ。現場が深刻なバイト不足による過重労働で悲鳴をあげる中で、「24時間営業をやめたいというオーナーはいない」なんてことを当時の社長が自信満々に言ってのけたことで大炎上。今もチョロチョロと火種の残るリスクになってしまった。

 これとまったく同じことが、「楽天」でも起きる可能性がある。楽天市場には20年2月時点で、4万9816店が出店している。それだけあれば当然、客もそこまで訪れず、売り上げが厳しい零細ショップもある。出店料、システム利用料などを楽天に払ってわずかなお金が残る程度の店にとって、「送料負担」はショバ代が上がることに他ならず、「廃業」の背を押す。つまり、共通ルールがちっともハッピーじゃない出店者も一定数でてくるのだ。

(出典:ロイター)

 そのような「送料無料化の犠牲者」の声が、メディアやSNSで社会に広まったらどうなるか。楽天側が「いやいや、送料無料ルールのおかげで、みんなこんなにハッピーなんです」とドヤ顔で釈明すればするほど、セブンと同じレールを突き進んでいく。その先に待っているのは、「現場の疲弊に耳を貸さず、高いロイヤリティをむしり取る大企業」という負のブランディングなのだ。

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