楽天の「送料無料」は大丈夫なのか ロジックが微妙スピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2020年02月04日 08時08分 公開
[窪田順生ITmedia]
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マッチョな考え方は、理解を得られるのか

 そんなのはお前の考えすぎだという”楽天ファン”の方も多くいらっしゃるだろうが、既に署名を集めて公正取引委員会に提出をする楽天ユニオンのような一部出店者もいる。こういう体制に不満を抱いた人たちは「強行策」に出られると、「じゃあ、しょうがないか」とあきらめるより、さらに過激なアクションに出るケースのほうが多い。

 つまり、楽天の「送料無料ラインの統一」にまつわる騒動は、3月18日にスタートすればおさまるようなものではなく、3月18日から始まる長期的リスクになっていく恐れがあるのだ。これは現在セブンのブランドイメージをじわじわと低下させている24時間営業問題とまったく同じだ。

 先ほどのZOZOが送料の一律有料化に踏み切った時、前澤社長はこのように述べている。

 「送料は無料なわけないが、無料で当たり前という誤認識を与えてしまったのはEC事業者の責任」

 「3980円以上買い物をしたら無料」というのも、どこかで誰かがその負担を押し付けられているはずだが、3兆円だ10兆円だとビジネスが巨大になっていくと、このあたりの「責任」はスコーンとどこかへ飛んでいく。そして、崇高な目標を達成するためには、「無理」を押し通すのが当たり前となって、それを耐えるのが個人の義務になる。戦時中の国民が「欲しがりません勝つまでは」を強いられたのと同じである。

 コンビニという社会インフラを維持してさらなる成長をするという崇高な目的のためには、「24時間営業」は不可欠なのだから、FCオーナーは弱音などを吐くな、嫌ならやめちまえ、という考え方もこれに近い。

 高度経済成長期ならいざ知らず、経済も人口も縮小していく今の日本で、このようなマッチョな考え方が果たしてどこまで理解を得られるのか。楽天側の今後のメッセージ発信に注目したい。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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