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ブラック企業、セクハラ、解雇、引きこもり……38歳女性に刻まれた「氷河期という呪い」ロスジェネ女子の就職サバイバル(2/5 ページ)

» 2020年02月05日 08時00分 公開
[菅野久美子ITmedia]

過労とストレスで「けいれん発作」

 「当時は、安く人を使うのが当たり前という空気が蔓延(まんえん)していたんです。家に帰る気力が無くて、PCの梱包用の“プチプチ”(いわゆる気泡緩衝材)にくるまって、会社でよく寝泊まりしていました。プチプチってあったかいんですよ」

photo 厚生労働省は氷河期世代を採用で支援すると表明したが、「遅すぎた」などの批判も(同省公式Webサイトから引用)

 入社から9カ月を過ぎた頃から体調がおかしくなった。電力会社のシステムの入れ替えという重大な仕事を佐藤さん1人の手に委ねられることになったからだ。長時間労働と仕事の重圧で、全身にけいれん発作が起きるようになった。

 「明らかに過労とストレスですね。長時間労働もあって疲れ過ぎていたし、システムが止まったら大変なことになる、と思ったら精神的にやられてしまった。仕事の責任感が重すぎたんです」

心病み転職した先もブラック

 佐藤さんは、心身を病み退職。その後転職活動をしたが、当然ながら大手に採用されることは無い。転職先の会社はソフトウェア開発会社だったが、前の会社と同じブラック企業だった。長時間労働は変わらず、会社のソファで寝泊まりする日々は変わらなかった。

 しかし、佐藤さんもいつしか、そんな生活に適応しようと奮闘していた。寝る間も惜しんでシステム開発について必死に勉強したのだ。

 「その会社で働くうちに、負けられない!と変なやる気を出してしまったんです。今思うと、ブラックな環境での努力は一番無駄だし、良くない。頑張ることでかろうじてプライドを保っていたのかもしれません」

 しかし、働き始めて2年が経った頃、業務内容が大きく方向転換し、佐藤さんのこれまでの仕事は外注されることになり、リストラの対象となる。

 「労基がどうこうと言われますが、零細企業だと人って簡単に辞めさせられると思ってるんですよ。『仕事をあげたいけどうちは小さい会社だからもう無理』と言われると、居づらい空気になって、辞めざるをえなくなるんです」

婚活では「男性」が女性の収入値踏み

 20代半ばになると、周囲は寿退社した同級生もいるし、親も「仕事がうまくいかないならお見合いでもしろ」と言う。佐藤さんは婚活もしていたが、同世代の男子もロスジェネなので、相手の収入やキャリアには敏感に反応してくる。

 「同世代の男性も金銭的には苦しかったと思います。合コンでも大手に勤める女の子には男性はすごく反応するけど、私みたいな零細企業だと名前を言っても「何それ?聞いたことない」みたいな反応でした。お相手の男性に露骨に親の資産を聞かれたこともある。キャリアも収入面でも、給料も恥ずかしくて言えない額だったので、婚活も八方ふさがりになってしまいました」

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