私には、佐藤さんの涙ぐましいほどの努力は一種強迫的にすら感じるが、ここまで私たちの世代が追い込まれた末の行動でもあるのだ。
「氷河期世代は今活躍している人と、能力はあるのにつぶされた人との差が激しいと思うんですよ。20代30代は、その後の人格形成にかなり影響されると思うんです。一番はキャリアで挫折しているので自信が持てないんですよ。一歩間違ったら自分もずっとニートとかひきこもりになったかもしれない。ニートのときは生きていることすら嫌だった。かつての私みたいに、つぶされたロスジェネはいっぱいいると思うんですよ」
佐藤さんのような「生傷」を受け続けたロスジェネ世代は、取材をしていても少なくない。「自信がない」という言葉はロスジェネ世代を取材していてよく聞く言葉だ。
ブスブスとナイフで刺され続け、血を流しながら必死に戦い続けたが、気が付くとそれはいつしか致命傷になっている。企業にぼろぞうきんのように使われ、女性の場合、「女であること」がさらにその苦しみに追い打ちをかける。安心して帰れるホーム―ベースのはずの家には、年功序列が当たり前の年長世代の親たちがいて、恐ろしいほどに無理解で無神経な言葉を投げかけてくる。そんな二重苦とも三重苦とも言える重荷の中で、身も心も引き裂かれてしまう。自信を奪われるのも当然だ。それは決して、自己責任という言葉で片付けて良いものではないはずだ。
佐藤さんには夢がある。もし、自分が管理職になって社会で権力を持つときがきたら、氷河期世代を積極的に採用して不遇な同世代を少しでも救いたいという思いだ。現在佐藤さんは管理職を目指して、日々猛勉強中に励んでいる。私はそんな佐藤さんの温かく、真っすぐな視線に、同世代として一縷(いちる)の希望を感じずにはいられなかった。
筆者よりお知らせ :連載「ロスジェネ女子の就職サバイバル」では、実際に就職やキャリア遍歴で苦労や悩みを抱えたロスジェネ世代(1970年〜82年生まれ)の女性で、取材させていただける方を募集しております。lossgenesearch@gmail.comまでお寄せいただければ幸いです。
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