結婚もうまくいかず、IT企業を転々とした佐藤さんは、20代後半にベンチャーのソフトウェア開発会社に就職。年俸350万で、これまでの奴隷のような待遇とは一線を画したホワイトな会社だった。そのため3年間、順調に働くことができた。
しかし、ここでは社長のセクハラという別の地獄が待っていた。「ITベンチャーあるあるかもしれないんですが」、と佐藤さんは前置きしながらうつむいた。
「社長に『付き合いたい』と言われたんです。もちろん社長は既婚者ですよ。それで断った瞬間に会社に居場所がなくなったんです。翌週、社長に『あいつ要らないな』と、手のひらを返されて辞めさせられることになったんです」
またここでもうまくいかないのか、と思うと心が折れた。一番つらかったのは、一番味方でいて欲しい親に罵倒されたときだ。
「そんなに会社をいくつも変わるような雑な生き方ってあるか。本当にお前は仕事運がない。仕事まじめにやってんのか!」
当時はセクハラやパワハラという概念が今ほど浸透していなかった。親にも絶対に会社を辞めた理由は言えない。それが佐藤さんを追い詰めた。
「分からない。どうしよう。私、何が悪かったんだろう」
泣きながら、そう返すしかなかった。佐藤さんは会社を辞めた理由を誰にも言えずに、たった1人で抱え込んだ。打ちのめされ、次第に家にひきこもるようになる。転職活動をする気力すら起きないほど絶望していた。
なぜ、自分だけ結婚も仕事もうまくいかないんだろう――。なんで、なんで!なんで私はこんなに辛い目にあわされるの――。
無気力となり、布団から起き上がれなくて、気が付くと床ずれができていた。
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