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脱24時間で息吹き返したセブン加盟店、密着ルポで迫る「時短営業の意外な現実」コンビニオーナー“大反乱”の真相(5/5 ページ)

» 2020年02月12日 08時00分 公開
[北健一ITmedia]
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来店客「店長が夜休めてうれしい」

 だが、人手不足は「ちょっと」どころではなく、また顧客意識の変化も、鈴木氏の予想を超えている。A店が時短に踏み切って以降、Bさんは「お客様に怒られたことは一度もありません。まあ、深夜に店にいないせいかもしれませんが(笑)」と話す。「看板の灯りも消していて閉店していることが分かりますし、近隣に複数のコンビニもありますし」

 午後11時過ぎに来店した若い常連の男性は「いつ来ても、店長さん(Bさんのこと)常におるんですよ。いつ休んでるのか心配で。僕も飲食業で以前は夜勤が多かったんですが、働き詰めの店長が夜休めるようになってうれしいです」と語った。

時短への“抵抗感”にじむセブン本部の冊子

 A店の時短営業や、それを理解する担当の本部社員、顧客の受けとめこそ、まっとうな変化対応だろう。その反面、「時短営業の希望を伝えたら、セブン‐イレブンの本部社員から思いとどまるよう説得された」との加盟店からの声は少なくない。19年秋には、加盟店向けに、電話帳のように厚く煩雑な時短ガイドラインが、なぜか部外秘扱いで配布された。かなり煩雑な手続きが示されたこの冊子の行間にも、「時短させたくない」とのセブン本部の本音がにじむ。

 だが、コンビニ業態だけが働き方改革に逆らい続けるのは無理があろう。経済産業省が設置した「新たなコンビニのあり方に関する検討会」(座長=伊藤元重学習院大学教授)も、2月6日に示した報告書案で「サプライチェーン全体の働き方改革の観点からも、24時間営業や休日のあり方については、店舗の実情に応じた柔軟な対応を認めることが検討されるべきではないか」と指摘した。

 小売業態で大きな存在感を持つコンビニ、中でも“王者”セブンが率先して変われば、業界のサプライチェーン全体での働き方もきっと変わる。そして、その変化の急先鋒は地域に密着した加盟店であるべきだ。なぜなら、地域住民にとってなじみの店であればあるほど、オーナーとその家族の働き方改革=時短営業への、彼ら消費者の理解も得やすいからだ。

著者プロフィール

北健一(きた けんいち)

ジャーナリスト。1965年広島県生まれ。経済、労働、社会問題などを取材し、JAL「骨折フライト」、郵便局の「お立ち台」など、企業と働き手との接点で起きる事件を週刊誌、専門紙などでレポート。著書に『電通事件 なぜ死ぬまで働かなければならないか』(旬報社)、『その印鑑、押してはいけない!』(朝日新聞社)ほか、共著に『委託・請負で働く人のトラブル対処法』(東洋経済新報社)ほか。ルポ「海の学校」で第13回週刊金曜日ルポ大賞優秀賞を受賞。


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