クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ハスラーの進歩池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/6 ページ)

» 2020年02月17日 07時15分 公開
[池田直渡ITmedia]

 つまり4つのタイヤで走る運動体としても、グローバルで戦うにはハンデを抱えている。筆者は長く持論として展開してきたが、日本の軽規格は、グローバルなAセグメントの標準サイズに合わせるべきだ。

 なぜならば、そういうハンデを抱えながら、日本のメーカーは世界の自動車メーカーを驚かせるようなマイクロカーを数多く生み出してきたからだ。

 欧州メーカーの重鎮も日本の軽自動車には注目しており、フォルクスワーゲンを率いた故フェルディナント・ピエヒや、フィアットの総帥、故ジャンニ・アニェッリという自動車の巨人たちも、新型が出るたびに軽自動車を購入したり、試乗をしたりして自社のエンジニアたちに研究を指示していたという。世界が注目する日本の自動車技術の粋のひとつが軽自動車なのだ。

 もしこれが法的にいびつにされたサイズを抜け出し、グローバルなAセグメントサイズになれば、世界を席巻できる可能性は高い。技術的には文句なく世界一なのだ。Aセグメントは、伸長著しい新興国マーケットで最初に普及するサイズであり、以後マーケットの成長に合わせて、売れ筋モデルがクラスアップして、外貨獲得のエースになる可能性は高いのだ。

 という話をすると、「2つのサイズを作ればいいじゃないか?」と言う人がいるが、両方を開発するのはあらゆるリソーセスの無駄である。意外に知られていないが、トヨタのような巨大企業でさえ、チーフエンジニアには一軍と二軍がいる。読者諸兄が会社勤めであれば、各部署からエースを引き抜いて、ドリームチームを作った後、元のチームがどういうていたらくになるか見当が付くだろう。軽自動車=Aセグメントになれば、メーカーを代表するエースエンジニアがその車種の開発に当たれる。この差は大きい。

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