クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

ハスラーの進歩池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/6 ページ)

» 2020年02月17日 07時15分 公開
[池田直渡ITmedia]

構造接着剤の導入と静音設計

 さてハスラーに実際に乗ってみてどうだったのか? 全体としては明らかなレベルアップを感じた。特に質感の向上だ。

 まず、走り出してすぐボディがしっかりしたことを感じる。数値的には、ねじり剛性が30%、曲げ剛性が20%向上している。静負荷で議論しても始まらないのだが、とはいえそれもひとつの基準である。さて剛性が向上している以上に、シャシーやボディの一体感が向上していることが見受けられる。

 アンダーシャシー部に関しては、骨格を滑らかにつないで合理的な形状にしたHEATECTの恩恵だが、これと組み合わされるアッパーボディに多彩な新技術を追加している。

 まず環状構造を強化するためにBピラーにブレースを追加するとともに、リヤゲート開口部の四隅を滑らかな曲面でつないで、上物の箱構造の歪(ゆが)みを可能な限り排除した。加えて、重要な接合部には構造用接着剤を使って接合部の結合を強め、接着剤の弾性で振動を吸収する。当然隙間が埋まるので外部からの音の進入も減らせる。

構造用接着剤を使って剛性を向上させた新型ハスラー

 実は今回のハスラーは、静粛性向上をテーマのひとつに組み込んでいる。クルマのルーフは、各部の振動を拾って太鼓の皮のように音を拡大しがちだが、そこからの音を軽減する技術も複数導入した。接合部には高減衰マスチックシーラーと呼ばれるゴム系の弾性接着剤を導入している。さらにルーフインナーにも吸音性の高い成型天井を採用することで、振動由来の音を防ぐと共に、雨粒が天板を叩(たた)く音も軽減している。

 今回のハスラーは、軽量シャシー「HEATECT」によって車両重量で810〜880キログラムを実現している。乗り味は「ボディが金庫のように硬い」というのとは違うが、軽量感を感じつつ、みっちりした塊感がある不思議な感覚のボディである。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.