では、なにかとつけて世界一優秀だと自画自賛する、日本のキャリア官僚たちが、なぜそんな前近代的な手法を選んだのかというと、日本のお家芸である「前例踏襲主義」が影響している。
実は今回のような検疫スタイルは、1879年7月に施行された「海港虎列剌病伝染予防規則」がベースなっている。つまり、まだ空からの入国経路がなく、「鎖国」的な発想を引きずっていた明治時代の制度がいまだに引きずられているのだ。
戸籍制度、夫婦同姓、軍隊のような”しごき”や”いじめ”がまん延する刑務所、そして悪名高い人質司法など例を挙げればキリがないが、日本は明治にできたルールを後生大事に守る傾向がある。「効率悪いし、現代の人権感覚とマッチしないから見直そうよ」という意見が出ても、「キサマ! 日本の伝統をバカにするのか!」とたかだか120年程度のルールをありがたがって盲従してきた。
そんな”明治ルールの神格化”が今回の「ダイヤモンド・プリンセスの悲劇」も招いた側面があるのだ。だが、クルーズ船対応よりもはるかにハラワタが煮えくり返っている問題がある、という人も多いだろう。そう、「中国人対応」だ。
コロナウィルスの脅威が世界に伝えられる中で、アメリカ、オーストラリア、シンガポール、フィリピンなどが中国全土からの外国人入国拒否という対応をとったのと対照的に、日本は湖北省、浙江省に滞在歴のある外国人などを原則入国拒否というソフト路線を続けている。
結果、「水際対策として生ぬるい」「中国への忖度か」といった批判の嵐にさらされており、「安倍応援団」として名高い保守系文化人の間からもブーイングが出ているのだ。
そんな”ファン離れ”も関係しているのか、支持率も落ちている。ANNが15〜16日に実施した最新の世論調査でも、支持は先月から5.6%下落して39.8%となって、「不支持」(42.2%)が上回った。また、コロナウイルス対策についても「評価しない」(50%)が「評価する」(46%)をやや上回っているのだ。
このような結果はちょっと考えれば当然かもしれない。
安倍政権の支持者には、中国や韓国という「反日国家」への怒りが生きる原動力になっている、という愛国心溢れる方も多い。そのような人たちからすれば、このような「媚中(びちゅう)ぶり」は「裏切り」以外の何物でもない。事実、いつもは日本につらくあたる中国外務省の報道官が、日本政府の「全面的な協力」に感謝を表明するなど、安倍政権の対応に大満足なのだ。
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