イケメン愛妻家を演じていた不倫俳優には、どんな人格攻撃をしようが、どんな罵詈雑言を浴びせても、「正義の裁き」という位置付けになるように、日本社会では「世間のイメージを裏切る」ことは万死に値する重罪だ。
同じロジックでいけば、愛国心溢れる保守系政治家を演じていた媚中派首相も「裏切り者の売国奴」としてボコボコに叩かれなくては、筋が通らないのである。ただ、かばうわけではないが、安倍さんには「信者」たちを失望させてでも、このような「中国人対応」をしなければいけなかった理由がある。主に以下の3つだ。
(1)習近平氏との日中首脳会談を成功させるため
(2)東京オリンピック2020を予定通り開催するため
(3)日本経済のため
まず、(1)に関しては、2月17日の衆院予算委員会の集中審議での茂木敏充外相の答弁が分かりやすい。こんなに国内では感染拡大が問題になっているにもかかわらず、習近平氏の国賓来日を、予定通りの4月上旬で調整しているというのだ。
全人代でさえ延期するというのに、日中首脳会談になぜここまで執着しているとかというと、珍しく日中双方の利害関係が一致しているからだ。習主席からすれば、中国に対して厳しい入国制限をしない「友好国」である日本を訪れることは、世界に「新型コロナは終息に向かってますよ」とアピールすることができる。アメリカを筆頭とする、中国人の入国拒否国を黙らせて、一刻も早く経済活動を再開するため、日中首脳会談を利用したいのだ。
一方、安倍首相としては、そんな習主席の思惑に応えることは、「ひとつ貸し」になる。米中の対立が激化する中で、日中で多少なりとも良好な関係を構築できれば、トランプへの「手土産」もできる。また、北朝鮮の金正恩委員長との「橋渡し」も期待できる。もし日朝首脳会談を成功させて、拉致被害者の帰国にこぎつけられれば支持率アップにつながるだけではなく、歴史に名を残す宰相になれるのだ。
景気の停滞、桜を見る会、IR疑獄など国内で安倍首相は苦しい立場に追いやられている。内政がガタガタのときには、外交の「成果」を狙うのは、トランプ大統領を見ても分かるように、古今東西の為政者の習性なのだ。ただ、そのようなメリットに加えて、安倍首相には中国、いや習主席とどうしても仲良くならなくてはいけない、のっぴきならない事情がある。
それが(2)の「東京2020を予定通り開催するため」である。
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