そして、そのような”ジャパンファースト”が(3)の「日本経済のため」ということにも関係していることは言うまでもない。
今回の中国への対応は、日本のインバウンドが中国人観光客に依存をしているからだと言う指摘が多いが、その通りだ。世界中から観光客を呼ぶといいながらも、日本の観光産業はいまだに中国と韓国によって支えられている。そのため、中国人の出入りを完全に封じてしまうことは、ただでさえ景気減退の方向に入っている日本経済をさらに痛めつけることになってしまうのだ。
という話をすると、「こんなことになったのは観光立国とか言っていた連中が悪い」などと言い出す人がいるが、我々の中国依存はもはやインバウンドだけではない。ジェトロの2019年3月のレポートによれば、日本の貿易総額の21.4%は中国が占めており12年連続で1位、「中国において我が国の対中直接投資額は第3位及び進出企業数は第1位であるように、日中間の経済関係は緊密かつ相互依存的」(外務省Webサイトより)になっているのだ。
実際、中国国内にある自動車各社の工場がストップをして、業績に大きな影響を与えたように、日本経済は今や米国ではなく、中国に依存をしている厳しい現実があるのだ。
愛国心溢れる方たちは「中国なんかと付き合っている企業の製品は不買だ!」とお怒りになるが、もし現実に中国と手を切ったら、日本経済はさらに落ち込む。
残念ながら、これがGAFAのようなプレイヤーもおらず、世界の時価総額ランキングのトップ50の中にかろうじて41位にトヨタ自動車が入っているという、この国のリアルだ。
それを踏まえると、日本政府が中国人への入国制限に「弱腰」になるのも納得ではないか。
少し前、東京大学生産技術研究所教授で、都市震災軽減工学の専門家である目黒公郎氏のお話をうかがう機会があった。その際に、非常に印象に残ったのが、「地震や豪雨などの自然災害は、その被災地がもともと抱えていた社会的課題を、短時間で一気に最悪の形で浮かび上がらせる」という言葉だった。
貧しい人が多くて不衛生な地域で、大地震が起きれば、家は倒壊して、貧しい人はさらに貧しくなる。避難生活でトレイや下水の問題も出てくるので、さらに不衛生な環境になる。地域が抱える「病」が災害で一気に表面化するというのだ。
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